学習のねらい
故事の三回目。「虎の威を借る」を読みます。「虎の威を借る」には、動物、虎と狐が登場します。どんな話なのでしょうか。内容を理解するとともに、故事成語としての意味も学習してください。漢文訓読にも、少し慣れてきたころかと思います。その調子で、本文を読んでいきましょう。
文法・表現
- 〜の三回目(順序)
- 「故事の三回目」=「故事的第三回」。
- 〜には、〜が登場します(範圍+出現)
- 「『虎の威を借る』には、動物が登場します」=「『虎の威を借る』中登場…」。
- どんな話なのでしょうか(疑問の柔軟化)
- 「どんな話なのでしょうか」=「是什麼樣的故事呢」。
- 〜とともに、〜も学習してください(並行+勧誘)
- 「理解するとともに、意味も学習してください」=「同時也學習意義」。
- 〜にも、少し慣れていきましょう(範圍+勧誘)
- 「漢文訓読にも、少し慣れていきましょう」=「漸漸熟悉漢文訓讀吧」。
中文翻譯
故事的第三回,閱讀「虎の威を借る」。本話中登場的有「虎」與「狐」這兩種動物。是什麼樣的故事呢?讓我們在理解內容的同時,學習作為故事成語的意義。也請漸漸熟悉漢文訓讀吧。
●学習のポイント●
〈一〉本文を声に出して読む
〈二〉漢字の意味に注意しながら、現代語に訳す
〈三〉話の背景と故事成語としての意味を理解する
文法・表現
- 〜に注意しながら、〜に訳す(並行+帰結)
- 「意味に注意しながら、現代語に訳す」=「一邊注意意義一邊翻成現代語」。
- 〜の背景と〜としての意味を理解する(並列)
- 「背景と意味を理解する」=「理解背景與意義」。
中文翻譯
〈一〉朗讀本文
〈二〉一邊注意漢字的意義一邊翻譯成現代語
〈三〉理解故事的背景以及作為故事成語的意義
■本文を声に出して読む
漢文の学習では、訓読のきまりに従って、漢文を読めるようになること、そして、漢文のリズムに慣れることが最も大切です。訓点(「句読点」「返り点」「送り仮名」)の学習で学んだ知識を生かして、「虎の威を借る」の文章を、声に出して、何度も読んでみましょう。主な記号(漢字の左下に書いてある「返り点」)については、「訓読の基本(1)」の学習メモを、もう一度確認してください。
文法・表現
- 〜では、〜こと、そして、〜ことが最も大切です(範圍+並列+最上級)
- 「学習では、〜こと、そして、〜ことが最も大切です」=「在學習中,…和…最重要」。
- 〜のきまりに従って(基準)
- 「訓読のきまりに従って」=「依照訓讀的規則」。
- 〜を生かして、〜(手段+目的)
- 「知識を生かして」=「活用知識」。
- 〜気分で、〜ましょう(態度+勧誘)
- 「気分で読みましょう」=「以…的氣氛來讀」。
中文翻譯
在漢文學習中,依照訓讀的規則學會閱讀漢文、並熟悉漢文的節奏,這兩點都很重要。讓我們活用「訓點」(句讀點、返り點、送り仮名)的學習所得,朗讀「虎の威を借る」的文章吧。以聆聽寺子屋學生般的心情來讀(附有音檔,請聆聽)。
● レ点の連続
今回初めて登場する返り点の読み方には注意しましょう。
畏レ狐レ也 (狐を畏ると為すなり。)
文法・表現
- 〜初めて登場する〜(連体修飾+初出)
- 「今回初めて登場する返り点」=「本回首次出現的返り點」。
- 〜には注意しましょう(注意喚起+勧誘)
- 「には注意しましょう」=「請注意」。
- 畏レ狐レ也(漢文返り點例)
- 「畏レ狐レ也」=書下文為「狐を畏ると為すなり」=「把…當作畏懼狐狸」。「レ」=反讀一字。
中文翻譯
請注意本回首次出現的返り點讀法。例如「畏レ狐レ也」(狐を畏ると為すなり)。
■漢字の意味に注意しながら、現代語に訳す
「虎の威を借る」は、虎に捕まった狐が、生き延びるために考え出した悪知恵で、「獣たちが、狐の後ろから歩く虎が恐ろしくて逃げているのに、虎自身は、狐が恐ろしいから逃げている」と思いこんでしまう、というお話です。
文法・表現
- 〜に捕まった〜(受身連体)
- 「虎に捕まった狐」=「被老虎抓到的狐狸」。
- 〜ために考え出した〜(目的+連体修飾)
- 「生き延びるために考え出した悪知恵」=「為了求生想出的壞主意」。「悪知恵」=狡猾的點子。
- 〜のに、〜と思いこんでしまう(逆接+誤認)
- 「逃げているのに、〜と思いこんでしまう」=「明明…,卻誤以為…」。
- 〜というお話(同格+総括)
- 「というお話」=「是…的故事」。
中文翻譯
「虎の威を借る」是這樣的故事——被老虎抓住的狐狸為求生而想出的「狡計」:「其他動物其實是因為害怕走在狐狸後面的老虎才逃,但老虎自己卻誤以為『大家是因為害怕狐狸才逃』」。
【語句の意味】
- 百 …………… たくさんの/多くの
- 子 ……………… あなた
- 敢へて~無かれ … 決して~するな(強い禁止)
- AをしてBしむ … AがBであるようにする/AにBさせる(使役)
- 天帝 …………… 天の神
- Aを以てBと為す … AをBだと思う
- 今 ……………… もし(仮定)
- 観る …………… 注意してみる/念を入れてみる
- 敢へて~ざらんや … どうして~しないことがあろうか(~する、反語)
- 走る …………… 逃げる
- 然り …………… なるほどその通りである
- 故に …………… そこで
- 遂に …………… そのまま/つまり「狐の提案通りに」
■話の背景と故事成語としての意味を理解する
「虎の威を借る」の話も、やはり「守株」や「五十歩百歩」同様、自分の主張に説得力を持たせるためのたとえ話です。
「虎の威を借る」の話は、単に「虎に捕まった狐が逃れたいために考え出した悪知恵」の話ではなく、実は、もっと厳しい現実を背景としたお話なのです。
ある国に、諸国からその実力を畏れられている大臣がいました。ある日、王が家来たちに「諸国は自分よりも大臣を怖がっていると聞くが本当か」と尋ねます。その時に、他国の工作員が、王と大臣との仲を裂こうと、「虎の威を借る」のたとえ話を持ち出すのです。そして、王は「虎」、大臣は「狐」、畏れられているのはもちろん王様で、「大臣は王の権力をかさに着ているだけだ」といって王に取り入るのです。
文法・表現
- 〜も、やはり〜同様、〜(並列+類比)
- 「『虎の威を借る』も、やはり〜同様、〜」=「『虎の威を借る』也跟…一樣」。
- 〜に説得力を持たせるための〜(使役+目的)
- 「説得力を持たせるためのたとえ話」=「讓…擁有說服力的比喻」。
- 〜ではなく、〜があります(対比+存在)
- 「ではなく、歴史的な背景があります」=「並非…,而是有歷史背景」。
- 〜が〜のを見て、〜と言いました(観察+発話)
- 「を見て、〜と言いました」=「看到…,說…」。
- 〜に対して、〜は〜と答えます(対象+応答)
- 「に対して、〜は〜と答えます」=「對此,…回答…」。
- 〜のではなく、〜のだ(強調的対比)
- 「のではなく、〜のだ」=「並非…,而是…」。
- 〜という真意を伝えたかったのです(過去願望+名詞句)
- 「という真意を伝えたかったのです」=「想傳達…的真意」。
中文翻譯
「虎の威を借る」這個故事,跟「守株」「五十歩百歩」一樣,是為了讓自己的主張具有說服力而採用的比喻故事。「虎の威を借る」並非單純是「被老虎抓住的狐狸為求生而想出的詭計」之故事,這背後其實有著歷史背景。
楚國的宣王見鄰國畏懼自己優秀的家臣昭奚恤,於是說:「我的家臣昭奚恤,連鄰國也害怕他。這究竟是怎麼一回事呢?」對此,臣下江乙以「虎の威を借る」作了回答。「鄰國其實畏懼的並非昭奚恤本人,他們只是畏懼楚國本身、畏懼楚國強大的軍隊罷了」——這就是江乙想透過此話傳達的真意。
- 「虎」……「王」のこと
- 「狐」……「大臣」のこと
【故事成語「虎の威を借る」の意味】
「他人の権威をかさに着ていばること」。「虎の威を借る狐」と「狐」がつくと、「他人の権威の陰に隠れていばる小人物」という意味で使われる。
文法・表現
- 〜をかさに着ていばる(慣用句)
- 「権威をかさに着ていばる」=「借他人權威耀武揚威」。「かさに着る」=利用某事為背景行使威風的慣用表現。
- 〜と、〜と〜という意味で使われる(条件+受身使用)
- 「と『狐』がつくと、〜という意味で使われる」=「當加上『狐』時,用作…的意義」。
- 〜の陰に隠れていばる〜(連体修飾+意気揚揚)
- 「権威の陰に隠れていばる小人物」=「躲在權威之後耀武揚威的小人」。
中文翻譯
「虎の威を借る」作為故事成語的意義:「借他人的權威來擺架子」。加上「狐」、寫作「虎の威を借る狐」時,意義為「躲在他人權威之後耀武揚威的小人物」。
【借虎威】 本文
虎求二百獣一而食レ之。得レ狐。
狐曰ク、「子無下敢食レ我上。天帝使二我長レ百獣一。
今子食ハバ我、是逆フ天帝命也。
子以ハバ我為サバ不信、吾為ニ子先行セン。子随ヘ我後、観。
百獣之見レ我而敢不レ走乎。」と。
虎以レ為然。故遂与レ之行ク。獣見レ之皆走ル。
虎不レ知レ獣畏レ己而走也。以レ為畏レ狐也。
〈書き下し文〉
虎百獣を求めてこれを食らふ。狐を得るに、狐曰はく、
「子敢へて我を食らふ無かれ。天帝我をして百獣に長たらしむ。
今子我を食らはば、これは天帝の命に逆らふなり。
子我を以て信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。子我が後に随へ、観よ。
百獣の我を見て敢へて走らざらんや。」と。
虎以て然りと為す。故に遂にこれと行く。獣これを見て、皆走る。
虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。以て狐を畏るると為すなり。
文法・表現
- 〜を求めて〜を食らふ(連用+他動詞)
- 「百獣を求めてこれを食らふ」=「尋找百獸吃」。
- 〜を得るに、〜曰はく(漢文訓讀調+発話定型)
- 「狐を得るに、狐曰はく」=「抓到狐狸時,狐狸說」。
- 子敢へて〜無かれ(禁止)
- 「子敢へて我を食らふ無かれ」=「您千萬不要吃我」。「敢へて」=「絶對地、定要」;「無かれ」=禁止。
- 天帝〜をして〜たらしむ(使役)
- 「天帝我をして百獣に長たらしむ」=「天帝讓我成為百獸之長」。「〜をして〜たらしむ」=經典使役構文。
- 今〜ば、〜なり(條件+断定)
- 「今子我を食らはば、これは天帝の命に逆らふなり」=「如今您若吃我,這就是違逆天帝之命了」。
- 〜を以て〜と為さば、〜(条件+判定)
- 「子我を以て信ならずと為さば」=「您若把我當作不可信」。
- 〜の為に〜せん(謙譲+意志)
- 「吾子の為に先行せん」=「我為您走在前面吧」。
- 〜に随ひて〜よ(命令+連用)
- 「子我が後に随ひて観よ」=「請您跟在我後面看」。
- 〜あへて〜ざらんや(反語)
- 「百獣の我を見て敢へて走らざらんや」=「百獸看到我,怎能不逃呢(一定會逃)」。「〜ざらんや」=反語的否定。
- 〜以て然りと為す(漢文の判定)
- 「虎以て然りと為す」=「虎以為然」。
- 故に〜(順接の漢文接続詞)
- 「故に遂に之と行く」=「於是終於和牠一起去」。
- 〜を畏れて〜を知らざる(受身的連用+打消)
- 「己を畏れて走るを知らざるなり」=「不知道是怕自己才逃」。
- 以て〜と為すなり(漢文の誤認的判定)
- 「以て狐を畏ると為すなり」=「以為(百獸)是畏狐」。
中文翻譯
(漢文書下文)虎百獣を求めてこれを食らふ。狐を得るに、狐曰はく、「子敢へて我を食らふ無かれ。天帝我をして百獣に長たらしむ。今子我を食らはば、これは天帝の命に逆らふなり。子我を以て信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。子我が後に随ひて観よ。百獣の我を見て敢へて走らざらんや」と。虎以て然りと為す。故に遂に之と行く。獣これを見て皆走る。虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。以て狐を畏ると為すなり。
【現代語訳】
虎が、多くの獣たちを探し求めては、食べていた。(虎が)狐を捕まえた時に、(その捕まった)狐が言うには、
「あなたは、決して私を食べてはいけません。天の神が、私を百獣の長であるようにしたのです。
もしあなたが私を食べたならば、それは天の神の命令に逆らうことになります。
あなたが、私の言うことを本当でないと思うならば、私はあなたのために先に立って歩いてみましょう。あなたは私の後ろについて来なさい、(そして)よく見なさい。
多くの獣たちが、私を見てどうして逃げないことがあろうか(いや、必ず逃げます)。」と。
虎は(狐の言うことを)なるほどその通りであると思った。そこで、そのまま狐と一緒に歩いて行った。獣たちはこれ(虎の姿)を見て、皆逃げた。
虎は獣たちが(自分)虎を怖がって逃げているのを(本当は虎を怖がって逃げているのだとは)知らなかった。(虎は)狐を怖がっているのだと思ったのである。
文法・表現
- 〜が、〜を探し求めては、食べていた(並列+過去継続)
- 「探し求めては、食べていた」=「一直找出來吃」。「~ては~た」=反復的動作。
- 〜を捕まえた時に、〜が言うには(時間+発話)
- 「捕まえた時に、〜が言うには」=「抓到時,…說」。
- 決して〜てはいけません(強い禁止)
- 「決して私を食べてはいけません」=「絕對不能吃我」。
- 〜のです(説明・断定の柔軟化)
- 「長であるようにしたのです」=「讓我成為長」。
- もし〜ば、〜のです(仮定+帰結)
- 「もしあなたが私を食べれば、〜のです」=「若您吃我,就是…」。
- 〜と思うなら、〜(条件+勧誘)
- 「信用できないと思うなら、私が先に歩いて行きましょう」=「若您不信,我走在前面」。
- 〜のではなく、〜と思っている(誤認)
- 「怖がっているのではなく、〜と思っている」=「並非畏…,而是以為…」。
中文翻譯
(現代語譯)老虎尋找眾多獸類來吃。當捉到一隻狐狸時,狐狸說:「您絕對不可吃我。天帝讓我成為百獸之長。如今您若吃了我,這便是違逆天帝之命的事。您若認為我所說的不可信,那麼我可以為您走在前面,您跟隨在我身後觀看。看見我的百獸,怎麼會有膽不逃走的呢?」
老虎認為這話有道理,於是與狐狸一同前行。獸類們看見他們便都逃走。老虎不知道——這些獸類其實是畏懼自己這隻老虎才逃,反而以為「牠們是因畏懼狐狸才逃」。
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文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
- 「無断転載及び商用利用を固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。