言語げんご文化ぶんか #24

漢文かんぶん

漢文かんぶん入門にゅうもん 漢文かんぶんしたしむ

故事成語こじせいご 「虎の威を借るとらのいをかる」 (戦国策せんごくさく

講師こうし 渡辺わたなべ 恭子きょうこ

学習がくしゅうのねらい

故事こじ三回目さんかいめ。「虎の威を借るとらのいをかる」を読みますよみます。「虎の威を借るとらのいをかる」には、動物どうぶつ虎と狐がとらときつねが登場しますとうじょうします。どんなはなしなのでしょうか。内容をないようを理解するりかいするとともに、故事成語こじせいごとしての意味もいみも学習してがくしゅうしてください。漢文かんぶん訓読にもくんどくにも少しすこし慣れてなれてきたころかと思いますおもいます。その調子でちょうしで本文をほんぶんを読んでよんでいきましょう。

文法・表現

〜の三回目(順序)
故事の三回目」=「故事的第三回」。
〜には、〜が登場します(範圍+出現)
『虎の威を借る』には、動物が登場します」=「『虎の威を借る』中登場…」。
どんな話なのでしょうか(疑問の柔軟化)
どんな話なのでしょうか」=「是什麼樣的故事呢」。
〜とともに、〜も学習してください(並行+勧誘)
理解するとともに、意味も学習してください」=「同時也學習意義」。
〜にも、少し慣れていきましょう(範圍+勧誘)
漢文訓読にも、少し慣れていきましょう」=「漸漸熟悉漢文訓讀吧」。

中文翻譯

故事的第三回,閱讀「虎の威を借る」。本話中登場的有「虎」與「狐」這兩種動物。是什麼樣的故事呢?讓我們在理解內容的同時,學習作為故事成語的意義。也請漸漸熟悉漢文訓讀吧。

学習がくしゅうのポイント●

いち本文をほんぶんを声にこえに出してだして読むよむ
漢字のかんじの意味にいみに注意しながらちゅういしながら現代語にげんだいごに訳すやくす
さん話のはなしの背景とはいけいと故事成語こじせいごとしての意味をいみを理解するりかいする

文法・表現

〜に注意しながら、〜に訳す(並行+帰結)
意味に注意しながら、現代語に訳す」=「一邊注意意義一邊翻成現代語」。
〜の背景と〜としての意味を理解する(並列)
背景と意味を理解する」=「理解背景與意義」。

中文翻譯

〈一〉朗讀本文 〈二〉一邊注意漢字的意義一邊翻譯成現代語 〈三〉理解故事的背景以及作為故事成語的意義

本文をほんぶんを声にこえに出してだして読むよむ

漢文のかんぶんの学習ではがくしゅうでは訓読のくんどくのきまりに従ってしたがって漢文をかんぶんを読めるようになるよめるようになること、そして、漢文のかんぶんのリズムにりずむに慣れることがなれることが最ももっとも大切ですたいせつです訓点くんてん(「句読点くとうてん」「返り点かえりてん」「送り仮名おくりがな」)の学習でがくしゅうで学んだまなんだ知識をちしきを生かしていかして、「虎の威を借るとらのいをかる」の文章をぶんしょうを声にこえに出してだして何度もなんども読んでみましょうよんでみましょう主なおもな記号きごう漢字のかんじの左下にひだりしたに書いてあるかいてある返り点かえりてん」)については、「訓読のくんどくの基本きほん(1)」の学習がくしゅうメモを、もう一度いちど確認してかくにんしてください。

文法・表現

〜では、〜こと、そして、〜ことが最も大切です(範圍+並列+最上級)
学習では、〜こと、そして、〜ことが最も大切です」=「在學習中,…和…最重要」。
〜のきまりに従って(基準)
訓読のきまりに従って」=「依照訓讀的規則」。
〜を生かして、〜(手段+目的)
知識を生かして」=「活用知識」。
〜気分で、〜ましょう(態度+勧誘)
気分で読みましょう」=「以…的氣氛來讀」。

中文翻譯

在漢文學習中,依照訓讀的規則學會閱讀漢文、並熟悉漢文的節奏,這兩點都很重要。讓我們活用「訓點」(句讀點、返り點、送り仮名)的學習所得,朗讀「虎の威を借る」的文章吧。以聆聽寺子屋學生般的心情來讀(附有音檔,請聆聽)。

レ点のてんの連続れんぞく

今回こんかい初めてはじめて登場するとうじょうする返り点のかえりてんの読み方によみかたに注意しましょうちゅういしましょう
おそきつねをなり狐をきつねを畏るとおそれると為すなりなすなり。)

文法・表現

〜初めて登場する〜(連体修飾+初出)
今回初めて登場する返り点」=「本回首次出現的返り點」。
〜には注意しましょう(注意喚起+勧誘)
には注意しましょう」=「請注意」。
畏レ狐レ也(漢文返り點例)
畏レ狐レ也」=書下文為「狐を畏ると為すなり」=「把…當作畏懼狐狸」。「」=反讀一字。

中文翻譯

請注意本回首次出現的返り點讀法。例如「畏レ狐レ也」(狐を畏ると為すなり)。

漢字のかんじの意味にいみに注意しながらちゅういしながら現代語にげんだいごに訳すやくす

虎の威を借るとらのいをかる」は、虎にとらに捕まったつかまった狐がきつねが生き延びるいきのびるために考え出したかんがえだした悪知恵でわるぢえで、「獣たちがけものたちが狐のきつねの後ろからうしろから歩くあるく虎がとらが恐ろしくておそろしくて逃げているのににげているのに虎自身はとらじしんは狐がきつねが恐ろしいからおそろしいから逃げているにげている」と思いこんでしまうおもいこんでしまう、というお話ですはなしです

文法・表現

〜に捕まった〜(受身連体)
虎に捕まった狐」=「被老虎抓到的狐狸」。
〜ために考え出した〜(目的+連体修飾)
生き延びるために考え出した悪知恵」=「為了求生想出的壞主意」。「悪知恵」=狡猾的點子。
〜のに、〜と思いこんでしまう(逆接+誤認)
逃げているのに、〜と思いこんでしまう」=「明明…,卻誤以為…」。
〜というお話(同格+総括)
というお話」=「是…的故事」。

中文翻譯

「虎の威を借る」是這樣的故事——被老虎抓住的狐狸為求生而想出的「狡計」:「其他動物其實是因為害怕走在狐狸後面的老虎才逃,但老虎自己卻誤以為『大家是因為害怕狐狸才逃』」。

語句のごくの意味いみ

話のはなしの背景とはいけいと故事成語こじせいごとしての意味をいみを理解するりかいする

虎の威を借るとらのいをかる」の話もはなしも、やはり「守株しゅしゅ」や「五十歩百歩ごじっぽひゃっぽ同様どうよう自分のじぶんの主張にしゅちょうに説得力をせっとくりょくを持たせるもたせるためのたとえ話ですはなしです
虎の威を借るとらのいをかる」の話ははなしは単にたんに虎にとらに捕まったつかまった狐がきつねが逃れたいためにのがれたいために考え出したかんがえだした悪知恵わるぢえ」の話ではなくはなしではなく実はじつは、もっと厳しいきびしい現実をげんじつを背景としたはいけいとした話なのですはなしなのです
ある国にくにに諸国からしょこくからその実力をじつりょくを畏れられているおそれられている大臣がだいじんがいました。ある王がおうが家来たちにけらいたちに諸国はしょこくは自分よりもじぶんよりも大臣をだいじんを怖がっているとこわがっていると聞くがきくが本当かほんとうか」と尋ねますたずねます。その時にときに他国のたこくの工作員がこうさくいんが王とおうと大臣とのだいじんとの仲をなかを裂こうとさこうと、「虎の威を借るとらのいをかる」のたとえ話をはなしを持ち出すのですもちだすのです。そして、王はおうはとら」、大臣はだいじんはきつね」、畏れられているのはおそれられているのはもちろん王様でおうさまで、「大臣はだいじんは王のおうの権力をけんりょくをかさに着ているきているだけだ」といって王におうに取り入るのですとりいるのです

文法・表現

〜も、やはり〜同様、〜(並列+類比)
『虎の威を借る』も、やはり〜同様、〜」=「『虎の威を借る』也跟…一樣」。
〜に説得力を持たせるための〜(使役+目的)
説得力を持たせるためのたとえ話」=「讓…擁有說服力的比喻」。
〜ではなく、〜があります(対比+存在)
ではなく、歴史的な背景があります」=「並非…,而是有歷史背景」。
〜が〜のを見て、〜と言いました(観察+発話)
を見て、〜と言いました」=「看到…,說…」。
〜に対して、〜は〜と答えます(対象+応答)
に対して、〜は〜と答えます」=「對此,…回答…」。
〜のではなく、〜のだ(強調的対比)
のではなく、〜のだ」=「並非…,而是…」。
〜という真意を伝えたかったのです(過去願望+名詞句)
という真意を伝えたかったのです」=「想傳達…的真意」。

中文翻譯

「虎の威を借る」這個故事,跟「守株」「五十歩百歩」一樣,是為了讓自己的主張具有說服力而採用的比喻故事。「虎の威を借る」並非單純是「被老虎抓住的狐狸為求生而想出的詭計」之故事,這背後其實有著歷史背景。 楚國的宣王見鄰國畏懼自己優秀的家臣昭奚恤,於是說:「我的家臣昭奚恤,連鄰國也害怕他。這究竟是怎麼一回事呢?」對此,臣下江乙以「虎の威を借る」作了回答。「鄰國其實畏懼的並非昭奚恤本人,他們只是畏懼楚國本身、畏懼楚國強大的軍隊罷了」——這就是江乙想透過此話傳達的真意。

故事成語こじせいご虎の威を借るとらのいをかる」の意味いみ

他人のたにんの権威をけんいをかさに着てきていばること」。「虎の威を借るとらのいをかるきつね」と「きつね」がつくと、「他人のたにんの権威のけんいの陰にかげに隠れてかくれていばる小人物しょうじんぶつ」という意味でいみで使われるつかわれる

文法・表現

〜をかさに着ていばる(慣用句)
権威をかさに着ていばる」=「借他人權威耀武揚威」。「かさに着る」=利用某事為背景行使威風的慣用表現。
〜と、〜と〜という意味で使われる(条件+受身使用)
と『狐』がつくと、〜という意味で使われる」=「當加上『狐』時,用作…的意義」。
〜の陰に隠れていばる〜(連体修飾+意気揚揚)
権威の陰に隠れていばる小人物」=「躲在權威之後耀武揚威的小人」。

中文翻譯

「虎の威を借る」作為故事成語的意義:「借他人的權威來擺架子」。加上「狐」、寫作「虎の威を借る狐」時,意義為「躲在他人權威之後耀武揚威的小人物」。


借虎威しゃくこい本文ほんぶん

とらもとめて百獣ひゃくじゅうをシテくらふこれをうるにきつねを
きつねいはく、「なかれあへてくらふわれを天帝てんてい使しむわれを百獣ひゃくじゅうに
いまくらわハバわれをこれさからふ天帝てんていのめいになり
おもはハバわれをサバ不信ふしんならずとわれためしがせんかうセンしたがへわがしりへにみよ
百獣之見ひゃくじゅうのこれを見われをあへてざらんはしら。」と。
とらおもへらくしかりとゆえにつひにこれゆくけものみてこれを皆走みなはしる
とらしらざるなりけもののおそれておのれをはしるをおもひなすなりおそるときつねを

書き下し文かきくだしぶん

とら百獣をひゃくじゅうを求めてもとめてこれを食らふくらふ狐をきつねを得るにうるにきつね曰はくいはく
敢へてあえて我をわれを食らふくらふ無かれなかれ天帝てんてい我をわれをして百獣にひゃくじゅうにちょうたらしむ。
いま我をわれを食らはばくらわば、これは天帝のてんていの命にめいに逆らふなりさからうなり
我をわれを以てもって信ならずとしんならずと為さばなさばわれ子のしの為にために先行せんせんこうせん我がわが後にあとに随へしたがえ観よみよ
百獣のひゃくじゅうの我をわれを見てみて敢へてあえて走らざらんやはしらざらんや。」と。
とら以てもって然りとしかりと為すなす故にゆえに遂についにこれと行くゆくけものこれを見てみて皆走るみなはしる
とら獣のけものの己をおのれを畏れておそれて走るをはしるを知らざるなりしらざるなり以てもって狐をきつねを畏るるとおそるると為すなりなすなり

文法・表現

〜を求めて〜を食らふ(連用+他動詞)
百獣を求めてこれを食らふ」=「尋找百獸吃」。
〜を得るに、〜曰はく(漢文訓讀調+発話定型)
狐を得るに、狐曰はく」=「抓到狐狸時,狐狸說」。
子敢へて〜無かれ(禁止)
子敢へて我を食らふ無かれ」=「您千萬不要吃我」。「敢へて」=「絶對地、定要」;「無かれ」=禁止。
天帝〜をして〜たらしむ(使役)
天帝我をして百獣に長たらしむ」=「天帝讓我成為百獸之長」。「〜をして〜たらしむ」=經典使役構文。
今〜ば、〜なり(條件+断定)
今子我を食らはば、これは天帝の命に逆らふなり」=「如今您若吃我,這就是違逆天帝之命了」。
〜を以て〜と為さば、〜(条件+判定)
子我を以て信ならずと為さば」=「您若把我當作不可信」。
〜の為に〜せん(謙譲+意志)
吾子の為に先行せん」=「我為您走在前面吧」。
〜に随ひて〜よ(命令+連用)
子我が後に随ひて観よ」=「請您跟在我後面看」。
〜あへて〜ざらんや(反語)
百獣の我を見て敢へて走らざらんや」=「百獸看到我,怎能不逃呢(一定會逃)」。「〜ざらんや」=反語的否定。
〜以て然りと為す(漢文の判定)
虎以て然りと為す」=「虎以為然」。
故に〜(順接の漢文接続詞)
故に遂に之と行く」=「於是終於和牠一起去」。
〜を畏れて〜を知らざる(受身的連用+打消)
己を畏れて走るを知らざるなり」=「不知道是怕自己才逃」。
以て〜と為すなり(漢文の誤認的判定)
以て狐を畏ると為すなり」=「以為(百獸)是畏狐」。

中文翻譯

(漢文書下文)虎百獣を求めてこれを食らふ。狐を得るに、狐曰はく、「子敢へて我を食らふ無かれ。天帝我をして百獣に長たらしむ。今子我を食らはば、これは天帝の命に逆らふなり。子我を以て信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。子我が後に随ひて観よ。百獣の我を見て敢へて走らざらんや」と。虎以て然りと為す。故に遂に之と行く。獣これを見て皆走る。虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。以て狐を畏ると為すなり。

現代語訳げんだいごやく

虎がとらが多くのおおくの獣たちをけものたちを探し求めてはさがしもとめては食べていたたべていた。(虎がとらが狐をきつねを捕まえたつかまえた時にときに、(その捕まったつかまった狐がきつねが言うにはいうには
「あなたは、決してけっして私をわたしを食べてはいけませんたべてはいけません天の神がてんのかみが私をわたしを百獣の長でひゃくじゅうのちょうであるようにしたのです。
もしあなたが私をわたしを食べたならばたべたならば、それは天の神のてんのかみの命令にめいれいに逆らうことになりさからうことになります。
あなたが、私のわたしの言うことをいうことを本当でないとほんとうでないと思うならばおもうならば私はわたしはあなたのために先にさきに立ってたって歩いてみましょうあるいてみましょう。あなたは私のわたしの後ろにうしろについて来なさいついてきなさい、(そして)よく見なさいよくみなさい
多くのおおくの獣たちがけものたちが私をわたしを見てみてどうして逃げないことがにげないことがあろうか(いや、必ずかならず逃げますにげます)。」と。
虎はとらは狐のきつねの言うことをいうことを)なるほどその通りであるととおりであると思ったおもった。そこで、そのまま狐ときつねと一緒にいっしょに歩いて行ったあるいていった獣たちはけものたちはこれ(虎の姿とらのすがた)を見てみて皆逃げたみなにげた
虎はとらは獣たちがけものたちが自分じぶん虎をとらを怖がってこわがって逃げてにげているのを(本当はほんとうは虎をとらを怖がってこわがって逃げているのだとはにげているのだとは知らなかったしらなかった。(虎はとらは狐をきつねを怖がっているのだとこわがっているのだと思ったのであるおもったのである

文法・表現

〜が、〜を探し求めては、食べていた(並列+過去継続)
探し求めては、食べていた」=「一直找出來吃」。「~ては~た」=反復的動作。
〜を捕まえた時に、〜が言うには(時間+発話)
捕まえた時に、〜が言うには」=「抓到時,…說」。
決して〜てはいけません(強い禁止)
決して私を食べてはいけません」=「絕對不能吃我」。
〜のです(説明・断定の柔軟化)
長であるようにしたのです」=「讓我成為長」。
もし〜ば、〜のです(仮定+帰結)
もしあなたが私を食べれば、〜のです」=「若您吃我,就是…」。
〜と思うなら、〜(条件+勧誘)
信用できないと思うなら、私が先に歩いて行きましょう」=「若您不信,我走在前面」。
〜のではなく、〜と思っている(誤認)
怖がっているのではなく、〜と思っている」=「並非畏…,而是以為…」。

中文翻譯

(現代語譯)老虎尋找眾多獸類來吃。當捉到一隻狐狸時,狐狸說:「您絕對不可吃我。天帝讓我成為百獸之長。如今您若吃了我,這便是違逆天帝之命的事。您若認為我所說的不可信,那麼我可以為您走在前面,您跟隨在我身後觀看。看見我的百獸,怎麼會有膽不逃走的呢?」 老虎認為這話有道理,於是與狐狸一同前行。獸類們看見他們便都逃走。老虎不知道——這些獸類其實是畏懼自己這隻老虎才逃,反而以為「牠們是因畏懼狐狸才逃」。

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文法・表現

〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
無断転載及び商用利用固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。

中文翻譯

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