学習のねらい
故事の二回目。「五十歩百歩」を学習します。「心を尽くした政治を行っているのに、我が国の人口が増えないのは、どうしてか」という王の質問に、孟子が答えています。孟子が梁の恵王に言いたかったこと(主張)を理解するとともに、「五十歩百歩」の故事成語としての意味も学びましょう。まずは、本文を「訓読のきまり」に従って読みましょう。
文法・表現
- 〜の二回目。〜を学習します(番号+目標)
- 「故事の二回目。『五十歩百歩』を学習します」=「故事的第二回。要學的是『五十歩百歩』」。
- 〜のに、〜のは、どうしてか(逆接+疑問)
- 「行っているのに、人口が増えないのは、どうしてか」=「明明…,但…,是為什麼呢」。
- 〜という王の質問に、〜(連体修飾+対象)
- 「という王の質問に、孟子が答えています」=「面對國王的這個問題,孟子做出回答」。
- 〜に言いたかったことを理解しましょう(過去願望+勧誘)
- 「言いたかったことを理解しましょう」=「讓我們理解(孟子)想說的」。
中文翻譯
故事的第二回,學習「五十歩百歩」。針對國王問「我盡心治理國家,可是人民卻不增加」,孟子作出回答。讓我們理解孟子想對梁惠王傳達的意思(主張)。
●学習のポイント●
〈一〉本文を声に出して読む
〈二〉「五十歩百歩」の現代語訳と故事成語としての意味を考える
〈三〉この話から、孟子が恵王に言いたかったことはなにか
文法・表現
- 〜の現代語訳と〜としての意味(並列)
- 「現代語訳と故事成語としての意味」=「現代語譯與作為故事成語的意義」。
- 〜から、〜は何か(疑問の定型)
- 「この話から、〜は何か」=「從這話中…是什麼」。
中文翻譯
〈一〉朗讀本文
〈二〉思考「五十歩百歩」的現代語譯及作為故事成語的意義
〈三〉這個故事中,孟子想對惠王說的是什麼
■本文を声に出して読む
漢文の学習では、訓読のきまりに従って、漢文を正しく読めるようになること、そして、漢文のリズムに慣れることが最も大切です。訓読(「句読点」「返り点」「送り仮名」)の学習で学んだ知識を生かして、「五十歩百歩」の文章を、声に出して何度も読んでみましょう。主な記号(漢字の左下に書いてある「返り点」)については、「訓読の基本(1)」の学習メモを、もう一度確認してください。
文法・表現
- 〜では、〜こと、そして、〜ことが最も大切です(範圍+並列+最上級評価)
- 「学習では、〜こと、そして〜ことが最も大切です」=「在學習中,…和…最重要」。
- 〜のきまりに従って(基準)
- 「訓読のきまりに従って」=「依照訓讀的規則」。
- 〜正しく読めるようになる(可能形+変化)
- 「正しく読めるようになる」=「變得能正確讀」。
- 〜を生かして、〜(手段+目的)
- 「知識を生かして」=「活用知識」。
- 〜気分で、〜ましょう(態度+勧誘)
- 「気分で読みましょう」=「以…的氣氛來讀吧」。
中文翻譯
在漢文學習中,依照訓讀的規則學會正確地閱讀漢文、並熟悉漢文的節奏,這兩點都很重要。讓我們活用「訓讀」(句讀點、返り點、送り仮名)的學習所得,將「五十歩百歩」的文章朗讀出來吧。以聆聽寺子屋學生般的心情來讀(附有音檔,請聆聽)。
■「五十歩百歩」の現代語訳と故事成語としての意味を考える
「五十歩百歩」は、王の質問に対して、孟子がその場にふさわしい「たとえ話」を用いてお答えする話です。今回の学習は、この「たとえ話」の部分です。戦いの最中において、五十歩逃げた兵士と百歩逃げた兵士は、逃げたという点で大きな差がない。重要なのは、「逃げずに戦うかどうかだ」という内容です。
文法・表現
- 〜は、〜に対して、〜(主題+対象)
- 「『五十歩百歩』は、王の質問に対して」=「『五十歩百歩』面對國王的提問」。
- 〜にふさわしい〜(連体修飾)
- 「その場にふさわしい『たとえ話』」=「適合場合的比喻故事」。
- 〜を用いてお答えする(手段+謙譲)
- 「を用いてお答えする」=「用…來回答」。「お~する」=謙譲。
- 〜の最中において、〜(場合+格助詞)
- 「戦いの最中において」=「在戰鬥當中」。
- 〜は違うものの、〜である(譲歩+断定)
- 「違うものの、同じである」=「雖然不同,但是相同」。
- 〜という、〜内容です(同格+名詞句)
- 「という、内容です」=「是…的內容」。
中文翻譯
「五十歩百歩」這個故事——是針對國王的提問,孟子使用適合場合的「比喻故事」來回答。本回所學的,就是這個「比喻故事」的部分。在戰場上,逃了五十步的士兵與逃了一百步的士兵,雖然逃跑的距離有所不同,但都同樣是逃跑——這就是孟子比喻的內容。
【語句の意味】
- 対へテ ……… お答えして(目上の人に答える場合)
- 請フ~セン …… どうか私に~させてください
- 塡然 ………… ドンドン(攻め太鼓の音)
- 兵刃 ………… 武器
- 接す …………… 交わる
- 甲 ……………… よろい
- 走る …………… 逃げる
- 或いは ………… ある者は
- 何如 …………… どうでしょうか
- 直だ~耳 …… ただ~なだけだ(限定を表す)
【故事成語「五十歩百歩」の意味】
「五十歩百歩」は、多少の違いはあるにしても、似たりよったりで、結局たいして違いがない。「わずかな違いはあっても、本質的には同じであること」という意味です。あまり褒められない点で似ている、というときに使われます。
文法・表現
- 〜にしても、〜(譲歩)
- 「違いはあるにしても」=「就算有差異」。「~にしても」=即便如此。
- 似たりよったり(慣用句)
- 「似たりよったり」=「差不多、半斤八兩」。慣用句,源於「似たり寄ったり」。
- 結局〜たいして〜ない(強調+打消)
- 「結局たいして違いがない」=「結果並沒什麼差別」。
- 〜があっても、〜的には〜(譲歩+本質)
- 「違いはあっても、本質的には同じ」=「就算有差異,本質上仍相同」。
- あまり褒められない〜(控えめな否定的評価)
- 「あまり褒められない点」=「不太值得稱讚的點」。受身可能の否定。
- 〜というときに使います(用法説明)
- 「というときに使います」=「用於…的時候」。
中文翻譯
所謂「五十歩百歩」,是指——雖有些許不同但相似、結果並無什麼差別。意思是「即使有微小差異,本質上是相同的」。常被用於「在不太值得稱讚的點上相似」這類情況。
■この話から、孟子が恵王に言いたかったことはなにか
「五十歩百歩」の話も、「守株」同様、自分の主張に説得力を持たせるための手段として使われた「たとえ話」です。
梁の恵王が孟子に、「私は、日頃、心を尽くした政治を行っている。隣国の王はこのような善政は行っていない。それなのに、なぜ隣国の人民は私を慕って移住してこないのか」と質問します。それに対して孟子が、「普段からもっと根本的に人民の生活が安定するような政治を行うべきで、表面的なことばかりに心を砕いても、何もしない隣国の王と大差がない」と述べます。その「たとえ話」として、兵士の話を持ち出したのです。戦争好きの王に、戦争のたとえ話をして、王の心を捉え、最後は自分のペースに持って行くところが、孟子の話の上手さです。
この時代は、戦争が絶えませんでした。恵王が富国強兵策を取っている限り、人民は戦争などにかり出されるため、生活も精神も安定せず、安らぎを覚えることはできません。孟子は、仁義に基づく「王道」でなければ人口の増加は望めないと、恵王に言いたかったのです。
文法・表現
- 〜も、〜同様、〜です(並列+類比+断定)
- 「『五十歩百歩』も、『守株』同様、〜です」=「『五十歩百歩』也與『守株』一樣,是…」。
- 〜に説得力を持たせる(使役)
- 「説得力を持たせる」=「讓…擁有說服力」。使役形。
- 〜手段として使われた〜(受身連体)
- 「手段として使われたたとえ話」=「被當作手段使用的比喻」。
- 〜が〜に、「〜」と尋ねます(質問の構造)
- 「恵王が孟子に、『〜』と尋ねます」=「惠王問孟子:『…』」。
- 〜のような〜は行っていない(比較+打消)
- 「このような善政は行っていない」=「沒有這樣的善政」。
- 〜なのに、〜ないし、〜ない。これはどうしてか(逆接+疑問)
- 「なのに、減りもしないし、増えもしない。これはどうしてか」=「但是不減也不增,為什麼呢」。
- 〜にしても、〜変わらない(譲歩+打消)
- 「にしても、変わらない」=「就算如此,也沒有改變」。
- 〜を批判して、〜と主張している(理由+引用)
- 「を批判して、〜と主張している」=「批評,主張…」。
中文翻譯
「五十歩百歩」與「守株」一樣,是為了增加自己主張的說服力而採用的「比喻故事」。梁惠王對孟子說:「我平日盡心施政。鄰國的君主並沒有像我這樣的善政。然而鄰國的人民並沒有減少,我國的人民也並沒有增加,這是為什麼呢?」對此,孟子用著名的「五十歩百歩」作了回答。
大意是——「(陛下)您的政治和鄰國比較起來,並沒有什麼差別」。也就是說,孟子是在批評梁惠王所做的並非真正能讓人民幸福的「王道之政」,只是和鄰國差不多——這正是孟子想表達的主張。
【五十歩百歩】 本文
孟子対ヘテ曰ク、「王好マバ戦ヲ、請フ以テ戦ヲ喩ヘン。
塡然として鼓シ之ヲ、兵刃既に接ス。
棄テテ甲ヲ曳キテ兵ヲ而走グ。或百歩而後ニ止マリ、或五十歩而後ニ止マル。
以テ五十歩ヲ笑バ百歩ヲ、則チ何如。」と。
王曰ク、「不可なり。直ダ不レ百歩耳。
是亦走ぐる也。」と。
〈書き下し文〉
孟子対へて曰はく、「王戦ひを好む。請ふ戦ひを以て喩へん。
塡然としてこれに鼓し、兵刃既に接す。
甲を棄て兵を曳きて走ぐ。或いは百歩にして後に止まり、或いは五十歩にして後に止まる。
五十歩を以て百歩を笑はば、則ち何如。」と。
王曰はく、「不可なり。直だ百歩ならざるのみ。これは亦走ぐるなり。」と。
文法・表現
- 〜対へて曰はく、〜(漢文の問答定型)
- 「孟子対へて曰はく」=「孟子回答說」。「曰はく」=漢文訓讀調的「言ふに」。
- 〜を好む(漢文・好の連体)
- 「王戦ひを好む」=「王愛好戰爭」。
- 請ふ〜(謙譲的願望)
- 「請ふ戦ひを以て喩へん」=「請允許我用戰爭來作比喻」。「請ふ」=希願;「~ん」=意志推量。
- 塡然として(擬聲+連用)
- 「塡然として」=「咚咚地(戰鼓聲)」。「然」=〜のように、〜とともに,副詞性。
- これに鼓し(指示+連用)
- 「これに鼓し」=「敲響戰鼓」。
- 〜既に〜(漢文時制)
- 「兵刃既に接す」=「兵器已經交鋒」。「既に」=漢文「已」字訓讀。
- 〜を棄て、〜を曳きて走ぐ(連用+並列)
- 「甲を棄て兵を曳きて走ぐ」=「丟下鎧甲、拖著兵器逃跑」。「走ぐ(にぐ)」=逃。
- 或いは〜にして後に〜、或いは〜にして後に〜(並列条件)
- 「或いは百歩にして後に止まり、或いは五十歩にして後に止まる」=「有的跑了百步停下,有的跑了五十步停下」。並列対比。
- 〜を以て〜を笑はば、〜(条件+疑問)
- 「五十歩を以て百歩を笑はば、則ち何如」=「若是用五十歩去嘲笑百歩,又如何呢」。「を以て」=用…;「則ち」=即;「何如」=如何。
中文翻譯
(漢文書下文)孟子対へて曰はく、「王戦ひを好む。請ふ戦ひを以て喩へん。塡然としてこれに鼓し、兵刃既に接す。甲を棄て兵を曳きて走ぐ。或いは百歩にして後に止まり、或いは五十歩にして後に止まる。五十歩を以て百歩を笑はば、則ち何如」と。
【現代語訳】
孟子がお答えして言うには、「王は戦争がお好きです。(ですから)どうか、私に戦争の話でたとえさせてください。
(ドンドンと)攻め太鼓を打ち鳴らし、両軍の武器が交わりました。(そのときに)よろいを脱ぎ捨てて、武器を引きずって逃げ出した兵士がいました。ある者は百歩逃げ出してから踏みとどまり、ある者は五十歩逃げ出してから踏みとどまりました。
(この時)五十歩逃げた兵士が、五十歩(しか逃げなかった)という理由で、百歩(逃げた兵士を)笑ったならば、どうでしょうか。」と。
王が言った、「よくない。ただ百歩でないだけだ。(これも)同じく逃げたのである。」と。
文法・表現
- 〜お答えして言うには、〜(謙譲+引用)
- 「お答えして言うには」=「回答說」。謙譲の引用文。
- 〜がお好きです(尊敬)
- 「戦争がお好きです」=「您愛好戰爭」。お+名詞+です=尊敬。
- どうか〜させてください(懇願+使役受身)
- 「どうか、〜たとえさせてください」=「請容我比喻」。
- 〜と、〜(順接の連用)
- 「鼓を打ち鳴らし、兵器が交わりました」=「擊鼓、兵器相交」。
- 〜よろいを脱ぎ捨てて、〜を引きずって逃げる(連用+並列)
- 「脱ぎ捨てて、引きずって逃げる」=「脫掉、拖著逃跑」。
- 〜では、〜どうでしょうか(疑問の定型)
- 「では、どうでしょうか」=「那麼會如何呢」。
中文翻譯
(現代語譯)孟子回答說:「王,您愛好戰爭。請容許我以戰爭來作個比喻。咚咚地擊響戰鼓,雙方兵刃已經交鋒。(此時)有士兵棄下鎧甲、拖著兵器逃跑。有的人逃了一百步才停下,有的人逃了五十步就停下。如果(這逃了五十步的人)以『只逃了五十步』來嘲笑『逃了一百步的人』,那會如何呢?」
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文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
- 「無断転載及び商用利用を固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。