学習のねらい
訓読の基本(1)(2)での学習をもとに、漢文の文章を読んでいきます。そのはじめとして、今回は故事「株を守る」を読みます。「株を守る」は、宋の国の人々に笑いものにされてしまった男の話です。なぜ男は笑いものになったのでしょうか。「株を守る」の内容を理解するとともに、故事成語としての意味も学びましょう。まずは、本文を今まで学習した「訓読のきまり」に従って読んでみましょう。
文法・表現
- 〜をもとに、〜(基礎)
- 「学習をもとに」=「以…為基礎」。前提。
- 〜を読んでいきます(敬体・継続)
- 「読んでいきます」=「持續讀下去」。
- 〜のはじめとして、〜(順序)
- 「そのはじめとして」=「作為其起點」。
- 〜にされてしまった〜(受身+完了)
- 「笑いものにされてしまった男」=「遭人嘲笑了的男人」。「~にする」+「~てしまう」=被動完了。
- なぜ〜のでしょうか(疑問の推量)
- 「なぜ笑いものにされてしまったのでしょうか」=「為何遭人嘲笑呢」。
- 〜を見ながら〜を楽しみましょう(並行+勧誘)
- 「イラストを見ながら、世界の物語を楽しみましょう」=「邊看插圖邊享受故事」。
中文翻譯
以「訓讀の基本」(一)(二)所學為基礎,開始閱讀漢文的文章。作為其開端,本回閱讀故事「株を守る」。這是宋國某個男人被嘲笑的故事。為什麼會被嘲笑呢?一邊看插圖,一邊享受古中文世界的故事吧。
●学習のポイント●
〈一〉「故事」・「故事成語」とは何か
〈二〉本文を声に出して読む
〈三〉「守株」の現代語訳と話の背景、故事成語としての意味を考える
文法・表現
- 〜とは何か(疑問の定型)
- 「とは何か」=「是什麼」。用語定義の疑問。
- 〜を声に出して読む(音読)
- 「を声に出して読む」=「朗聲讀出」。音読の指示。
- 〜の現代語訳と話の背景、〜としての意味を考える(並列)
- 「現代語訳と話の背景、〜としての意味を考える」=「思考現代語譯、故事背景、作為…的意義」。
中文翻譯
〈一〉「故事」「故事成語」是什麼
〈二〉朗讀本文
〈三〉思考「守株」的現代語譯、故事背景、以及作為故事成語的意義
■「故事」・「故事成語」とは何か
「故事」とは、昔から伝わっている出来事や話のことをいいます。そして、「故事成語」とは、その「故事」がもとになって生まれた言葉のことです。
文法・表現
- 〜とは、〜のことをいいます(定義の定型)
- 「『故事』とは、〜のことをいいます」=「所謂『故事』,就是…」。
- 〜から伝わっている〜(受身連体)
- 「昔から伝わっている出来事」=「自古流傳下來的事件」。
- 〜がもとになって生まれた〜(受身連体)
- 「『故事』がもとになって生まれた言葉」=「從『故事』演變而來的詞語」。
中文翻譯
所謂「故事」,是指自古流傳下來的事件、故事。而「故事成語」,則是由「故事」而來的詞語。
■本文を声に出して読む
漢文の学習では、訓読のきまりに従って、漢文を読めるようになること、そして、漢文のリズムに慣れることが大切です。訓読(「句読点」「返り点」「送り仮名」)の学習で学んだ知識を生かして、「株を守る」の文章を、声に出して何度も読んでみましょう。主な記号(漢字の左下に付いている「返り点」)については、「訓読の基本(1)」の学習メモをもう一度確認してください。
文法・表現
- 〜では、〜こと、そして、〜ことが大切です(範圍+並列+評価)
- 「学習では、〜こと、そして、〜ことが大切です」=「在學習中,…和…都很重要」。
- 〜のきまりに従って(基準)
- 「訓読のきまりに従って」=「依照訓讀的規則」。
- 〜を読めるようになること(可能形+名詞化)
- 「読めるようになること」=「變得能讀的這件事」。
- 〜のリズムに慣れること(漢語+格助詞)
- 「リズムに慣れること」=「習慣節奏的這件事」。
- 〜の学習で学んだ知識を生かして、〜(手段+目的)
- 「知識を生かして」=「活用知識」。
- 〜気分で、声に出して読みましょう(態度+勧誘)
- 「気分で読みましょう」=「以…的氣氛來讀吧」。
中文翻譯
在漢文學習中,依照訓讀的規則學會閱讀漢文、並熟悉漢文的節奏,兩者都很重要。讓我們活用在訓讀(句讀點、返り點、送り仮名)中所學的知識,將「株を守る」的文章朗讀出來吧。以聆聽寺子屋學生般的心情來讀(附有音檔,請聆聽)。
■「守株」の現代語訳と話の背景、故事成語としての意味を考える
「株を守る」は、兎が走って来て木の切り株にぶつかって死ぬという、二度とありそうもないことを見て、それが再び起こるのをじっと待っているという、何とも間抜けな男の話です。
文法・表現
- 〜が〜来て〜にぶつかって死ぬという、〜こと(連体修飾の引用)
- 「『~死ぬ』という、こと」=「『…死掉』這樣的事」。引用+同格名詞。
- 二度とありそうもないこと(反復不可能の表現)
- 「二度とありそうもないこと」=「不太可能再次發生的事」。強い否定推量。
- 〜を見て、〜が再び起こるのをじっと待っているという、〜(連体修飾+進行)
- 「を見て、〜のをじっと待っているという男」=「看到…,一直等候…的男人」。
- 何とも間抜けな〜(評価)
- 「何とも間抜けな男」=「真是傻氣的男人」。「何とも」=強調的副詞。
中文翻譯
「株を守る」是這樣的故事:兔子跑來撞上切株而死——這幾乎不可能再次發生的事,那個男人看到後,便一直在那裡等待它再次發生。真是個讓人摸不著頭緒的傻男人的故事。
【語句の意味】
- 田 ………………… 耕作地/畑
- 株 ………………… 木の切り株
- 触れ ………………… ぶつかる/突き当たる
- 因りて ……………… そこで/それによって
- 耒 ………………… 田畑を耕す道具
- 冀ふ …………… 願う
- 復た得べからずして …… 二度と手に入れることはできず
- 宋国の笑いと為る …… 宋の国中の笑いものとなった
「株を守る」の話は、韓非という学者が書いた本の中に、伝わる話です。韓非は、紀元前二三三年まで活躍した思想家で、法律や刑罰を重んじる思想である法家思想を極めた人として有名です。韓非は、君主に対して「昔の方法をそのまま持ち込むのではなく、今に相応しい方法で人民を治めるべきだ」と主張します。その時、自分の主張に説得力を持たせるための手段として、この寓話を使ったのです。
童謡「待ちぼうけ」の歌詞も「守株」の話から生まれました。
文法・表現
- 〜という〜が書いた〜(同格+受身連体)
- 「韓非という学者が書いた本」=「名為韓非的學者所寫的書」。
- 〜まで活躍した〜(範圍+過去)
- 「紀元前二三三年まで活躍した思想家」=「活躍到…的思想家」。
- 〜を重んじる〜(連体修飾)
- 「法律や刑罰を重んじる思想」=「重視法律與刑罰的思想」。
- 〜を極めた人として有名(評価)
- 「を極めた人として有名」=「以…的精通者著名」。
- 〜に対して〜と主張しました(対象+引用)
- 「君主に対して『〜』と主張しました」=「對君主主張『…』」。
- 〜こそ正しい(強調的肯定)
- 「こそ正しい」=「才是正確的」。
- 〜のための例の一つ(用途+部分)
- 「そのための例の一つです」=「是用來說明此(主張)的例之一」。
中文翻譯
「株を守る」這個故事,是學者韓非所著之書中流傳下來的故事。韓非是活躍至西元前233年的思想家,以「重視法律與刑罰的法家思想」聞名。韓非反對國君「為了治理而推行古代政治」的做法,主張「世間萬象皆變,依這時代之需治理國家才是正確的」——「守株」正是體現此主張的例子之一。
【故事成語「守株」の意味】
① いつまでも古いやり方にこだわって、新しいことに対処できないこと。
② 進歩のないこと。
文法・表現
- いつまでも〜にこだわって(持続+固執)
- 「いつまでも古いやり方にこだわって」=「一直執著於舊方法」。
- 〜に対処できないこと(不可能+名詞化)
- 「対処できないこと」=「無法應對」。
- 〜のないこと(打消連体+名詞化)
- 「進歩のないこと」=「沒有進步」。
中文翻譯
「守株」作為故事成語的意義:
①一味執著於舊有方法,無法應對新事物。
②沒有進步。
【守株】 本文
宋人有ニ耕田者一。
田中有レ株。
兎走リテ触レ株、折レ頸而死ス。
因リテ釈テテ其耒而守レ株、冀フ復得レ兎。
兎不レ可レ復得レ而、身為二宋国笑一。
〈書き下し文〉
宋人に田を耕す者有り。
田中に株有り。
兎走りて株に触れ、頸を折りて死す。
因りて其の耒を釈てて株を守り、復た兎を得んことを冀ふ。
兎復た得べからずして、身は宋国の笑いと為る。
文法・表現
- 〜に〜有り(漢文訓讀調・存在)
- 「宋人に〜有り」=「宋人中有…」。漢文「有」字句的訓讀。
- 〜走りて〜触れ、〜(連用+順接)
- 「兎走りて株に触れ」=「兔子跑著撞上樹樁」。連用形+て=順接連用。
- 〜頸を折りて死す(漢文の「死す」)
- 「頸を折りて死す」=「折斷頸子而死」。「死す」是サ變動詞「死す(しす)」,漢文訓讀調。
- 因りて〜(漢文順接の接続詞)
- 「因りて」=「因此」。漢文「因」字句的訓讀。
- 〜を釈てて〜を守り、〜(連用+意圖)
- 「耒を釈てて株を守り」=「放下耒(農具)守著樹樁」。
- 〜を得んことを冀ふ(意志+希求)
- 「復た兎を得んことを冀ふ」=「希望能再得到兔子」。「~んことを冀ふ」=書面語的希求。
- 〜べからずして(不可能+打消連用)
- 「復た得べからずして」=「沒能再得到」。「べからず」=「べし」的打消(不可能)。
- 身は〜と為る(変化)
- 「身は宋国の笑いと為る」=「自身成為宋國的笑話」。「と為る」=變成。
中文翻譯
(漢文書下文)宋人に田を耕す者有り。田中に株有り。兎走りて株に触れ、頸を折りて死す。因りて其の耒を釈てて株を守り、復た兎を得んことを冀ふ。兎復た得べからずして、身は宋国の笑いと為る。
【現代語訳】
宋の国の人に、畑を耕す者がいた。畑の中に木の切り株があった。
(ある日)そこへ兎が走って来て、その切り株に突き当たり、首の骨を折りて死んでしまった。
(農夫は)そこで自分のすきを放り出して切り株の番をし、再び兎を手に入れようと待ち望んだ。
(しかし)兎は二度とは手に入れることができず、彼自身は宋国中の人々の笑いものとなった。
文法・表現
- 〜の人に、〜者がいた(漢文「有」の現代語化)
- 「に、〜者がいた」=「有…的人」。
- 〜があった(過去存在)
- 「切り株があった」=「有個樹樁」。
- 〜が走って来て、〜に突き当たり、〜してしまった(連用+帰結)
- 「走って来て、突き当たり、死んでしまった」=「跑來撞上、結果死了」。「~てしまう」=完了+不本意。
- そこで、自分の〜を放り出して、〜(順接+連用)
- 「そこで、放り出して、〜守りをし」=「於是丟下…,做守候」。
- 結局、〜得ることができないで、〜となった(帰結)
- 「結局、得ることができないで、笑い物となった」=「最終沒能得到,反成笑柄」。
中文翻譯
(現代語譯)宋國有個耕田的人。田中有個樹的切株。一隻兔子跑過來撞上那個切株,折斷了脖子而死。
於是(那個人)扔下自己的耒(農具),守在那個切株旁,希望能再次得到兔子。然而兔子不可能再得到,他自身反倒成為宋國的笑柄。
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文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
- 「無断転載及び商用利用を固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。