学習のねらい
漢文は、楽しく、味わいのある話が多いのですが、昔の中国語で書かれているので、「訓読法(漢文のきまり)」を知らなければ、読むこともできません。そこで、はじめに、読み方のルールである「訓読の基本」を二回に分けて学びます。今回は、その二回目です。「返読文字」・「置き字」・「再読文字」とは何かを知り、その用法について学びましょう。
文法・表現
- 〜は、〜が多いのですが、〜(並列+逆接)
- 「漢文は、〜が多いのですが、〜読むこともできません」=「有許多…,但若不…就無法讀」。
- 〜で書かれているので、〜(受身+理由)
- 「中国語で書かれているので」=「因為是用中文寫的」。
- そこで、はじめに、〜(接続+順序)
- 「そこで、はじめに」=「因此、首先」。
- 〜にわたって、〜していきます(範圍+継続)
- 「二回にわたって、勉強していきます」=「用兩回,持續學習」。
中文翻譯
漢文中有許多有趣、值得玩味的故事,但因為是以古代中文寫成,若不懂「訓讀法(漢文的閱讀規則)」就無法閱讀。因此,用兩回的時間學習這套讀法的規則「訓讀的基本」。上次是第一回,本回是第二回。
●学習のポイント●
〈一〉「返読文字」について
〈二〉「置き字」について
〈三〉「再読文字」について
文法・表現
- 〜について(漢語+格助詞)
- 「『返読文字』について」=「關於『返讀文字』」。
- 返読文字(漢語熟語)
- 「返読文字」=「需從下往上反讀的字」(如「無」「不」等否定詞)。
- 置き字(漢語熟語)
- 「置き字」=「放在文中但不讀的字」(如「於」「焉」「矣」等虛字)。
- 再読文字(漢語熟語)
- 「再読文字」=「同一字要讀兩次的字」(如「未」「将」「当」等)。
中文翻譯
〈一〉關於「返讀文字」
〈二〉關於「置き字」
〈三〉關於「再讀文字」
■「返読文字」について
漢文を読む場合は、目的語には「ヲ」や補語には「ニ・ト・ヨリ」などの格助詞を送り仮名として付けて、述語に返って読むことを前回学びました。ところが、漢文の中には、「ヲ・ニ・ト・ヨリ」がなくても、下に置かれている語から返って読む文字があります。それを「返読文字」といいます。何度も出てきますので、その度に覚えましょう。次の赤字が「返読文字」です。
文法・表現
- 〜場合は、〜(範圍提示)
- 「読む場合は」=「讀…時」。
- 〜には〜などの〜を付けて、〜(連用+手段+目的)
- 「目的語には『ヲ』を付けて、述語に返って読む」=「目的語加上『ヲ』,回讀至述語」。
- 〜を前回学びました(過去・既習)
- 「を前回学びました」=「前回學過了」。
- ところが、〜(接続詞・逆接)
- 「ところが」=「然而」。意外性のある転換。
- 〜にも、〜(範圍内の例示)
- 「漢文の中には、〜もあります」=「漢文中也有…」。
- 〜なくても、〜(譲歩)
- 「『ヲ・ニ・ト・ヨリ』がなくても」=「即使沒有『ヲ・ニ・ト・ヨリ』」。
- 〜は必ず〜と言います(必然+命名)
- 「は必ず返って読みます。と言います」=「必定回讀。稱為…」。
- 代表的な〜には、〜があります(例示)
- 「代表的なものには、〜があります」=「典型的有…」。
- 〜を覚えておくと、〜便利です(条件+効用)
- 「主な返読文字を覚えておくと、便利です」=「記住主要的返讀文字會很方便」。
中文翻譯
閱讀漢文時,上回學了——目的語要加上「ヲ」、補語要加上「ニ・ト・ヨリ」等格助詞作為「送り仮名」,然後回讀到述語。但漢文中也有即使沒有「ヲ・ニ・ト・ヨリ」,下方的字也必定要返回去讀的字——這些被稱為「返讀文字」。常見的有:表否定者(如「不・無」)、表存在或所有者(如「有」)、表使役者(如「使」)、表受身者(如「見・被」)。記住主要的「返讀文字」會很方便。
少年老い易レ老 学成り難レ成。
(少年老い易く学成り難し。)
李下に冠を正さ不レ正レ冠。
(李下に冠を正さず。)
他山之石、可ニ以テ攻一玉。
(他山の石、以て玉を攻くべし。)
江戸時代の寺子屋では、漢文を教えるときに、「ヲニト(鬼と)会ったら返(帰)れ。」と教えたそうです。これは、文中で、「~ヲ・~ニ・~ト」という送り仮名が出てきたら、ひっくり返って読むのですよ、ということを覚えやすいように言った言葉です。また、補語に「ヨリ」を含めた「ヲニト(鬼と)会うヨリ返(帰)れ。」という覚え方もあります。
文法・表現
- 〜では、〜とき、〜と教えたそうです(受身的伝聞)
- 「寺子屋では、教えるときに、〜と教えたそうです」=「據說寺子屋教漢文時是這樣教的」。
- 「ヲニト(鬼と)会ったら返れ」(語呂合わせ)
- 把「ヲニト」三個格助詞與「鬼と」(と=鬼)語呂合わせ(諧音記憶法)。可愛的助記法。
- 〜たら〜(条件+命令)
- 「会ったら帰れ」=「遇到就回去」。た形+ら=条件、命令形。
- 〜が出てきたら、〜なさい(条件+勧告)
- 「送り仮名が出てきたら、ひっくり返って読みなさい」=「當出現…時,請反過來讀」。
- 〜ですよね(同意の確認)
- 「覚え方ですよね」=「是個記法吧」。同意の誘い。
- 〜ましょう(共同勧誘)
- 「覚えてしまいましょう」=「讓我們記下吧」。
中文翻譯
據說在江戶時代的寺子屋中,教漢文時會教學生:「ヲニト(碰到鬼的話)就回去吧」。意思是——文中如果出現「~ヲ・~ニ・~ト」這類送り仮名,就要回去讀。是不是一個很有意思的記憶口訣呢?我們也把它記下來吧。
■「置き字」について
漢文に使われている漢字は、それぞれ一回ずつ読むのが原則ですが、その原則から外れるものが二つあります。その一つが「置き字」で、もう一つが学習のポイント〈三〉の「再読文字」です。「置き字」とは、読まない漢字のことをいい、直接は読みませんが意味(役割)はあります。前後の文字の送り仮名に、それぞれの「置き字」の持つ意味(役割)を含ませて読んだり、単に語調を整えたり文末で語気を表したりします。「書き下し文」に改める時、「置き字」は書きません。
文法・表現
- 〜は、〜のが原則ですが、〜(断定+逆接)
- 「漢字は、一回ずつ読むのが原則ですが、〜外れるものがあります」=「漢字原則上每字讀一次,但…」。
- 〜から外れるもの(連体修飾)
- 「原則から外れるもの」=「不符原則的」。
- その一つが〜、もう一つが〜です(並列)
- 「その一つが『置き字』、もう一つが『再読文字』です」=「一個是…,另一個是…」。
- 〜とは、〜のことです(定義)
- 「『置き字』とは、読まない漢字のことです」=「所謂置き字,就是不讀的漢字」。
- 主に〜などです(限定+例示)
- 「主に『於・于・乎』などです」=「主要是…等」。
- 〜のうち、〜は、〜(範圍内+主題)
- 「このうち、四字は、〜位置します」=「其中,四個字位於…」。
- 〜は、〜ほぼ同じ意味になります(評価)
- 「同じような意味になります」=「意義大致相同」。
中文翻譯
漢文中所使用的漢字,原則上「每字讀一次」。但有兩種例外:其一是「置き字」,另一個則是學習要點〈三〉的「再讀文字」。
所謂「置き字」,是指「不讀的漢字」。主要有「於・于・乎・焉・矣・也・而」等。其中前四字常常被置於「補語」之前,表示「在~/向~/從~/與~/比起~」等意義。「於・于・乎」三者意義大致相同。
過ち而不レ改、是謂レ過矣。
(過ちて改めざる、是を過ちと謂ふ。)
忠言逆ニ於耳、而利ニ於行一。
(忠言は耳に逆へども、行ひに利あり。)
毋下以二己之長一而形中人之短上。
(己の長を以つてして人の短を形すること毋かれ。)
■「再読文字」について
訓読する時に、一つの漢字を二度読む文字のことを「再読文字」といいます。読み方は、最初に返り点に関係なく、日本語の副詞的な読みをし、さらにもう一度、今度は返り点に従って助動詞的(動詞もある)な読みをします。「書き下し文」に改める時は、一度目はそのまま漢字を用い、二度目の読みは平仮名にするのが決まりです。
文法・表現
- 〜する時に、〜のことを〜と言います(場合+命名)
- 「訓読する時に、〜のことを『再読文字』と言います」=「訓讀時,把…稱為『再讀文字』」。
- 〜を二度読む文字(連体修飾+数詞)
- 「一つの漢字を二度読む文字」=「同一漢字讀兩次的字」。
- 最初に〜、さらにもう一度〜(順序)
- 「最初に〜、さらにもう一度〜」=「先…、然後再…」。順序的副詞。
- 〜に関係なく、〜(無関係)
- 「返り点に関係なく」=「不管返り點」。
- 〜的な読みをします(属性的動詞)
- 「副詞的な読みをします」=「作副詞性的讀法」。
- 〜に従って、〜(基準)
- 「返り点に従って」=「依照返り點」。
- 〜には注意してください(注意喚起)
- 「には注意してください」=「請注意」。
- 〜は〜で書き、〜は〜で書きます(並列規則)
- 「最初の部分は漢字で書き、二度目は平仮名で書きます」=「第一次以漢字寫,第二次以平假名寫」。
中文翻譯
訓讀時,將同一個漢字讀兩次的字稱為「再讀文字」。讀法是——第一次先不管返り點,作為「副詞性」的讀法讀一次;接著再依返り點返回去,這次作為「助動詞性(也有作動詞性的)」的讀法讀一次。需要注意的是,「書き下し文」中,第一次讀的部分以漢字書寫,第二次讀的部分以平假名書寫。
未レ来。
(未だ来たらず。)
未レ聞二好学者一也。
(いまだ学を好む者を聞かざるなり。)
将レ限らんとす二其食一。
(まさに其の食を限らんとす。)
及レ時当二勉励一、歳月不レ待レ人。
(時に及んで当に勉励すべし、歳月は人を待たず。)
君自二故郷一来、応レ知二故郷事一。
(君故郷より来たる、応に故郷の事を知るべし。)
過猶レ不レ及也。
(過ぎたるは猶ほ及ばざるがごときなり。)
【主な再読文字】
| 漢字 |
読み方 |
意味 |
| 未 |
いまだ ~ず |
否定(まだ ~ない) |
| 将 / 且 |
まさに ~んとす |
未来・将来(今にも ~しようとする、~になろうとする) |
| 当 / 応 |
まさに ~べし |
当然(当然 ~すべきである)、推量(きっと ~であろう) |
| 猶 / 由 |
なほ ~がごとし |
比較(ちょうど ~のようだ、ちょうど ~と同じである) |
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文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
- 「無断転載及び商用利用を固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。