言語げんご文化ぶんか #18・19

古文こぶん

日々ひび思いおもい随筆ずいひつ

枕草子まくらのさうし 清少納言せいせうなごん 「うつくしきもの」 【全二回ぜんにかい

講師こうし 吉田よしだ しげる

いち】うつくしきもの

学習がくしゅうのねらい

枕草子まくらのそうし第百四十五段だいひゃくよんじゅうごだん前半ぜんはん読みますよみます作者さくしゃは「うつくしきもの」としてどのようなものを挙げあげ、それに対してどのような思いおもい持っているもっているかを読み解きますよみときます文法ぶんぽう事項じこうでは、助詞じょし働きはたらきについて理解りかい深めますふかめます
さらに、平安時代へいあんじだいに「うつくし」というがどのような意味いみ用いられたもちいられたかを学びまなび、そのあと意味いみ変遷へんせん追跡するついせきすることで、時代じだいとともに変化するへんかする言葉ことばについて考えてかんがえてみましょう。

文法・表現

〜の前半を読みます(敬体)
前半を読みます」=「讀…前半」。
〜として〜を挙げ、〜を持っているかを読み解きます(資格+疑問内包)
としてを挙げ、〜を持っているかを読み解きます」=「作為…列舉解讀其感受」。
〜について理解を深めます(漢語+格助詞)
はたらきについて理解を深めます」=「加深對作用的理解」。
〜の語の意味を考え、〜を確認します(並列)
意味を考え、変遷を確認します」=「思考意義、確認變遷」。

中文翻譯

本回閱讀《枕草子》第一四五段的前半。讀取作者列舉了什麼東西作為「うつくしきもの」、又對其抱持怎樣的感情。在文法方面,加深對助詞作用的理解。同時,思考「うつくし」一詞的意義,並確認其隨時代而變遷的過程。

学習がくしゅうのポイント●

いち第三段落だいさんだんらくまでの内容ないよう読み取るよみとる
助詞じょし働きはたらき知るしる
さん〉「うつくし」の意味いみ考えかんがえ時代じだいによる意味いみ変遷へんせん確認するかくにんする

文法・表現

〜までの〜(範圍)
「第三段落までの内容」=「到第三段為止的內容」。
〜による語の意味の変遷(漢語連体修飾)
「時代による語の意味の変遷」=「因時代而異的語義變遷」。

中文翻譯

〈一〉讀取至第三段為止的內容 〈二〉了解助詞的作用 〈三〉思考「うつくし」一詞的意義,確認語義隨時代的變遷

第三段落だいさんだんらくまでの内容ないよう読み取るよみとる

「うつくしきもの」の前半ぜんはん読みよみ作者さくしゃがどのようなものに「うつくし」と感じているかんじているかを確認しますかくにんします。また、作者さくしゃ観察眼かんさつがん鋭さするどさ理解するりかいするとともに、それをどのように表現してひょうげんしているか、注意ちゅういしながら学んでまなんでいきましょう。

文法・表現

〜を読み、〜を確認します(連用+目的)
を読みを確認します」=「讀並確認」。
どのようなものに〜と感じているか(疑問内包)
どのようなものに『うつくし』と感じているか」=「對什麼樣的東西感到『うつくし』」。
〜とともに、〜(並列の進行)
「観察眼の鋭さを理解するとともに、表現を学ぶ」=「同時理解觀察與表達」。
〜ながら、学んでいきましょう(並行+勧誘)
注意しながら、学んでいきましょう」=「注意一邊一邊學下去吧」。

中文翻譯

閱讀「うつくしきもの」的前半,確認作者把怎樣的東西感受為「うつくし」。同時,理解作者觀察力的敏銳,並注意她是如何表達的——一起來學習吧。

重要語句じゅうようごく

助詞じょし働きはたらき知るしる

まえ学んだまなんだように、助詞じょし付属語ふぞくご属しますがぞくしますが助動詞じょどうしとは異なりことなり活用がかつようがありません。助詞はじょしはほかの語やごやほかの文節ぶんせつとの関係をかんけいを示したりしめしたり、それらに一定のいっていの意味をいみを添えたりそえたりする働きをはたらきをします。

文法・表現

〜ように、〜(既知の引用)
「前に学んだように、〜」=「如先前所學,…」。
〜に属しますが、〜とは異なり〜(対比)
「付属語に属しますが、助動詞とは異なり活用がありません」=「屬於附屬語,但與助動詞不同,無活用」。
〜たり、〜たり〜(並列の機能)
「関係を示したり、意味を添えたりする」=「表示關係或添加意義」。
〜働きをします(機能の動詞句)
働きをします」=「起到…作用」。

中文翻譯

如同先前所學,助詞屬於「附屬語」,但與助動詞不同,沒有活用。助詞的作用,是表示與其他詞語或文節之間的關係,或為它們添加某種意義。

■「うつくし」の語のごの意味をいみを考えかんがえ時代にじだいによる語のごの意味のいみの変遷をへんせんを確認するかくにんする

我々のわれわれの用いるもちいる言葉もことばも重要なじゅうような言語げんご文化のぶんかの一つですひとつです。「うつくし」という語のごの意味のいみの変遷をへんせんを考えますかんがえます。『万葉集まんようしゅう』の時代ではじだいでは、「うつくし」は妻やつまや子などこなど肉親ににくしんに対してたいして「かわいい」という感情をかんじょうを表すあらわす言葉としてことばとして用いられましたもちいられました。それが、『枕草子まくらのそうし』の時代にじだいになると、対象がたいしょうが広がりひろがり、かわいらしいものに対して「うつくし」と表現しましたひょうげんしました。それが、江戸時代えどじだい直前のちょくぜんの頃にはころには自然のしぜんの美やびや人工的なじんこうてきな美をびを含めてふくめて「うつくし」が用いられたもちいられたようです。そして、現代ではげんだいでは美一般にびいっぱんに対してたいして「うつくしい」が使われるようにつかわれるようになりました。
平安時代へいあんじだい「うつくし」とほぼ同じおなじ意味でいみで用いられたもちいられた「らうたし」は現代ではげんだいではほとんど使われませんつかわれません。このように時代のじだいの推移にすいいにともなって、語のごの意味がいみが変わったりかわったり語のごの使用しよう頻度がひんどが変化したりへんかしたりすることを学びましょうまなびましょう

文法・表現

〜も〜の一つです(並列+分類)
言葉も重要な言語文化の一つです」=「詞語也是重要的語言文化之一」。
〜の時代では、〜という意味で用いられた(時代+受身)
「『万葉集』の時代では、〜として用いられました」=「在…時代被用作…」。
〜になると、〜が広がります(時代変化+拡大)
「平安時代以後になると、意味が広がります」=「到了…時代意義擴展」。
さらに〜になり、〜(程度の追加)
さらに意味の幅が広くなり、〜含まれる」=「進一步變廣,包含…」。
〜になると、ほとんど〜の意味で用いられる(範圍限定)
「現代になるとほとんど『美』の意味で用いられる」=「到了現代,幾乎只用於『美』之意」。
〜ことが分かります(受身的理解)
変化することが分かります」=「可知會變化」。

中文翻譯

我們所使用的詞語也是重要的「語言文化」之一。讓我們來思考「うつくし」一詞意義的變遷。在《萬葉集》的時代,「うつくし」是表達對妻子、孩子等親屬「可愛」之情的詞。到了平安時代以後,意義有所擴展,廣泛被用於對嬰兒或小東西等覺得「可愛」之意。其後再進一步擴展,到了《徒然草》的時代,加上了「美麗」、「好的、優秀」等意義。到了現代,「美しい」幾乎只在「美麗的」意義下使用。從這個例子也可以知道,詞語的意義並非永恆不變,而是會隨著時代而變化。


】うつくしきもの

学習がくしゅうのねらい

枕草子まくらのそうし第百四十五段だいひゃくよんじゅうごだん後半をこうはんを読みよみ作者のさくしゃの考えるかんがえる「うつくしきもの」にどのようなものがあるか、それをどのように表現してひょうげんしているかを学びましょうまなびましょう。また、『枕草子まくらのそうし』が内容的にないようてきに三つにみっつに大別されるたいべつされることを理解しりかいし同じおなじ随筆であるずいひつである徒然草つれづれぐさ』と比較してひかくして、どのようなところに特色がとくしょくがあるのかを学びますまなびます。さらに、作者さくしゃ清少納言がせいしょうなごんがどのような人物であったかをじんぶつであったかを考えてかんがえてみましょう。

文法・表現

〜の考える〜(連体修飾節)
「作者の考える『うつくしきもの』」=「作者所想的『可愛之物』」。
〜にどのようなものがあるか、〜(疑問内包の連鎖)
どのようなものがあるか、〜どのように表現しているか」=「有什麼如何表達」。
〜が〜に大別されることを理解する(受身+分類)
三つに大別されることを理解する」=「理解被大別為三類」。
〜との違いを知る(並列+対比)
「『徒然草』との違いを知る」=「了解與…的差異」。

中文翻譯

閱讀《枕草子》第一四五段的後半,學習作者所說的「うつくしきもの」有哪些、又是如何表達的。同時,理解《枕草子》在內容上可大致分為三類,並了解它與同為隨筆的兼好法師《徒然草》之間的差異。

学習がくしゅうのポイント●

いち第四だいよん第五段落のだいごだんらくの内容をないようを読み取るよみとる
〉『枕草子まくらのそうし』と随筆ずいひつ文学にぶんがくについて知るしる
さん清少納言がせいしょうなごんがどのような人物であったかじんぶつであったか理解するりかいする

文法・表現

〜について知る/〜を読み取る(並列)
について知る」「を読み取る」=「了解、讀取」。
〜がどのような〜であったか理解する(疑問内包+過去)
清少納言がどのような人物であったか理解する」=「理解…是怎樣的人物」。

中文翻譯

〈一〉讀取第四、第五段的內容 〈二〉了解《枕草子》與隨筆文學 〈三〉理解清少納言是怎樣的人物

第四だいよん第五段落のだいごだんらくの内容をないようを読み取るよみとる

文章のぶんしょうの後半をこうはんを読みよみ、「うつくしきもの」としてどのようなものが列挙されてれっきょされているのか、また、それがどのように表現されてひょうげんされているのかを読み取りますよみとります。それを通じてつうじて作者のさくしゃの卓抜なたくばつな表現力にひょうげんりょくについて学びますまなびます

文法・表現

〜として〜が列挙されているのか(受身+疑問内包)
としてどのようなものが列挙されているのか」=「作為…,列舉了什麼」。
〜を通じて、〜を学びます(手段+目的)
それを通じて、表現力を学びます」=「透過此學習表達力」。
卓抜な〜(漢語形容動詞)
卓抜な表現力」=「卓越的表達力」。

中文翻譯

閱讀文章的後半,讀取作為「うつくしきもの」列舉了什麼、是如何表達的。透過此,學習作者卓越的表達力。

重要語句じゅうようごく

■『枕草子まくらのそうし』と随筆ずいひつ文学にぶんがくについて知るしる

枕草子まくらのそうし』にはおよそ三百のさんびゃくの章段がしょうだんがあり、それを内容にないようによって大別するとたいべつすると次のつぎの三つにみっつに分類されますぶんるいされます

文法・表現

〜にはおよそ〜があり(概数+存在)
にはおよそ三百の章段があり」=「約有三百個章段」。
〜によって大別すると、〜に分類されます(手段+受身)
内容によって大別すると三つに分類されます」=「依內容大別,分為三類」。

中文翻譯

《枕草子》中約有三百個章段,依內容大別可分為以下三類。

  1. 類聚的るいじゅうてき章段しょうだん(「ものづくし」) … 「うつくしきもの」のように「……のもの」型のかたの章段としょうだんと、「星はほしは」「猫はねこは」のように「……は」型のかたの章段とがしょうだんとがあり、全章段のぜんしょうだんのおよそ半数をはんすうを占めますしめます
  2. 日記的にっきてき章段しょうだん中宮ちゅうぐう定子にていしに仕えたつかえた清少納言がせいしょうなごんが見聞したりけんぶんしたり経験したりけいけんしたりしたことを回想してかいそうして書かれたかかれた章段ですしょうだんです自慢話的なじまんばなしてきな話もはなしも含まれますふくまれます
  3. 随想的ずいそうてき章段しょうだん自然をしぜんを観察しかんさつし、スケッチ風にふうに書いたかいたものや、ある出来事にできごとに取材してしゅざいして自由にじゆうに書いたかいた章段ですしょうだんです作者のさくしゃの鋭いするどい観察眼がかんさつがんが想像されますそうぞうされます

随筆ずいひつ文学とぶんがくと呼ばれるよばれるものの中で、平安時代にへいあんじだいに書かれたかかれた枕草子まくらのそうし』と、鎌倉時代のかまくらじだいの末期にまっきに書かれたかかれた兼好けんこう法師のほうしの徒然草つれづれぐさ』とが双璧ですそうへきです。「枕草子まくらのそうし」には華やかなはなやかな宮廷きゅうてい生活のせいかつの様子やようすや作者のさくしゃの美意識がびいしきが表れていますしあらわれていますし、「徒然草つれづれぐさ」には作者のさくしゃの考えやかんがえや思想がしそうが表現されてひょうげんされていると考えられますかんがえられます

文法・表現

〜と呼ばれるもの(受身連体修飾)
と呼ばれるもの」=「被稱為的東西」。
〜に書かれた〜(受身連体)
「平安時代に書かれた『枕草子』」=「寫於平安時代《枕草子》」。
〜とが双璧です(並列+評価)
「〜とが双璧です」=「…兩者並列為雙璧」。「双璧」=並列的兩大名作。
〜が表れていますし、〜(並列+並列)
「『枕草子』にはが表れていますし、『徒然草』には〜」=「《枕草子》中展現…,《徒然草》中…」。
〜が見られます(受身的表現)
が見られます」=「可以見到」。

中文翻譯

在被稱為「隨筆文學」者之中,平安時代寫成的《枕草子》,與鎌倉時代末期兼好法師寫成的《徒然草》並列為雙璧。《枕草子》中可窺見華麗宮廷生活的樣貌與作者的美意識;《徒然草》則展現出兼好對人生的深思熟慮。

枕草子まくらのそうし豆知識まめちしき

① 『枕草子まくらのそうし』の書かれたかかれた十一世紀じゅういっせいき初めのはじめのころは、宮仕えのみやづかえの経験がけいけんがある女性たちがじょせいたちが活躍したかつやくした時代ですじだいです女性のじょせいの書いたかいた世界せかい最古のさいこの長編ちょうへん物語ともものがたりとも言われるいわれる源氏物語げんじものがたり』を書いたかいた紫式部やむらさきしきぶや歌人としてかじんとして知られるしられる和泉式部がいずみしきぶが有名ですゆうめいです
この時代のこのじだいの女性のじょせいの活躍はかつやくは世界的にせかいてきに見てもみても珍しいめずらしいことです。
③ 『枕草子まくらのそうし』や『源氏物語げんじものがたり』は各国のかっこくの言語にげんごに翻訳されほんやくされ現代でもげんだいでも広くひろく読まれていますよまれています
清少納言にはせいしょうなごんには橘則長たちばなののりながという男子とだんしと、のち藤原ふじわら彰子にしょうしに女房としてにょうぼうとして仕えつかえ小馬命婦こまのみょうぶ呼ばれたよばれた女子がじょしがいました。二人ふたり子もこも勅撰ちょくせん和歌集にわかしゅうに歌がうたが撰ばれたえらばれた歌人としてかじんとして知られていますしられています
清少納言のせいしょうなごんの晩年のばんねんのことですが、鎌倉時代かまくらじだい成立のせいりつの古事談こじだん』という説話せつわ集にはしゅうには若いわかい貴族たちがきぞくたちが清少納言のせいしょうなごんの家のいえの前をまえを通るとおる時にときに、「落ちぶれたおちぶれたもんだなあ」と声をこえを掛けるとかけると鬼のおにのような形相のぎょうそうの尼姿であまずがたで顔をかおを出しただした清少納言がせいしょうなごんが「すぐれた者ならものなら骨だってほねだって大切にたいせつにするよ。ここでも漢文をかんぶんを踏まえてふまえて、そんな心がけこころがけではえらくなれないね」とやり返したかえした話がはなしが載っていますのっています清少納言のせいしょうなごんの意地をいじを感じさせるかんじさせる説話ですせつわです

文法・表現

〜の書かれた〜(受身連体)
「『枕草子』の書かれた十一世紀」=「《枕草子》寫成的十一世紀」。
〜とも言われる〜(受身+並称)
「世界最古の長編物語とも言われる『源氏物語』」=「也被稱為世界最古長篇物語《源氏物語》」。
〜として知られる〜(資格+受身)
「歌人として知られる和泉式部」=「身為歌人聞名的和泉式部」。
〜にあたる〜(家族関係)
「中心人物にあたる」=「相當於中心人物」。
〜のなかで育ち、〜として頭角を現し(複合動詞)
「環境のなかで育ちとして頭角を現し」=「在…環境下成長嶄露頭角」。
〜を任じられました(受身+敬語)
を任じられました」=「被任命為」。
〜十年ほどお仕えして、〜記しています(時間+並列動作)
お仕えして記しています」=「侍奉記下」。謙譲+並列

中文翻譯

①《枕草子》寫成的十一世紀初期,是有宮中侍奉經驗的女性活躍的時代。被稱為世界最古長篇物語的《源氏物語》作者紫式部,以及身為知名歌人的和泉式部都很有名。 ②清少納言之父——清原元輔,是和歌名集《後撰和歌集》的編者,是當時和歌界的中心人物。在這樣的家庭背景下成長,清少納言自身也作為精通和歌的文人嶄露頭角,被中宮定子任命為侍從。她侍奉定子大約十年,記下了當時的宮廷生活。 ③《枕草子》是平安朝宮廷文學的代表作品,是了解當時宮廷生活與女性才華的珍貴記錄。


第百四十五段だいひゃくよんじゅうごだん本文ほんぶん

うつくしきもの、うりにかきたるちごかお雀のすずめの子のこのねず鳴きなきするに踊りをどり来るくる二つふたつ三つみつばかりなる児のちごの急ぎていそぎて這ひはひ来るくる道にみちに、いと小さきちいさきちりのありけるを、目ざとにめざとに見つけてみつけて、いとをかしげなるおよびにとらへて、大人おとなごとに見せたるみせたる、いとうつくし。頭はかしらは尼そぎあまそぎなる児のちごの目にめに髪のかみのおほへるを、かきはやらで、うちかたぶきて物などものなど見たるもみたるも、うつくし。
大きにはおほきにはあらぬ殿上童のてんじやうわらはの装束さうぞくきたてられて歩くもありくも、うつくし。をかしげなる児のちごの、あからさまに抱きていだきて遊ばしあそばしうつくしむほどに、かいつきて寝たるねたる、いとらうたし。
雛のひひなの調度てうど蓮のはちすの浮き葉のうきはのいと小さきをちひさきを池よりいけより取り上げたるとりあげたる葵のあふひのいと小さきちひさき何も何もなにもなにも小さきものはちひさきものは、みなうつくし。
いみじう白くしろく肥えたるこえたる児のちごの二つふたつばかりなるが、二藍のふたあゐの薄物うすものなど、きぬ短くてみじかくてたすき結ひゆひたるが、這ひ出でたるもはひゐでたるも、また、短きがみじかきが袖がちなるそでがちなる着てきて歩くもありくも、みなうつくし。八つやつ九つここのつ十ばかりとをばかりなどの男の子のをのこのこの声はこゑは幼げにをさなげにふみ読みたるよみたる、いとうつくし。
鶏のかけの雛のひなの足高にあしだかに白うしらうをかしげに、きぬ短かなるみじかなるさまして、ひよひよと、かしかましう鳴きてなきて親のおやのしり、また、先にさきに立ちてたちて歩くもありくも、をかし。かりのこ。瑠璃のるりのつぼ

文法・表現

うつくしきもの(連体止め+名詞)
うつくしきもの」=「可愛之物」。體言止め,清少納言類聚段的開頭定型。
〜にかきたる〜(受身連体)
「瓜にかきたる児の顔」=「畫在瓜上幼兒臉」。
〜の、〜するに〜来る(連体+順接)
「雀の子、ねず鳴きするに踊り来る」=「麻雀小子,學鼠叫便跳跳地過來」。「」=主格/同格;「」=順接。
〜ばかりなる〜(程度)
「二つ三つばかりなる児」=「大約二、三歲的幼兒」。
〜ありけるを、目ざとに〜(過去連体+逆接)
「塵のありけるを、目ざとに見つけて」=「有了灰塵,立刻機警地發現」。
いとをかしげなる〜(強調+連体)
いとをかしげなる指」=「非常可愛的手指」。
〜大人ごとに見せたる(受益+並列)
大人ごとに見せたる」=「給每個大人看」。
頭は尼そぎなる児(連体)
尼そぎ」=「尼姑式髮型,齊耳短髮」。古代幼兒的常見髮型。
〜のおほへるを、〜で、〜たる(連用+逆接+存続)
「髪のおほへるを、かきはやら、〜見たる」=「頭髮蓋住眼,不撥開看著」。「」=打消連用。
〜にはあらぬ〜(連体+打消)
「大きにはあらぬ殿上童」=「不太大的殿上童(在宮中侍奉的少年)」。
装束きたてられて(受身+連用)
装束きたてられて」=「被打扮起來」。
〜抱きて遊ばしうつくしむ(多重連用)
抱きて遊ばしうつくしむ」=「抱起來逗弄、疼愛」。
かいつきて寝たる(連用+存続)
かいつきて寝たる」=「緊緊抱住睡著」。
らうたし(古典形容詞)
らうたし」=「令人憐愛、可愛得讓人想呵護」。
雛の調度(体言止め)
雛の調度」=「玩具人偶的用具」。名詞での列舉
〜のいと小さきを、〜取り上げたる(連体+過去)
「浮き葉のいと小さきを取り上げたる」=「把很小的浮葉拿起來」。
何も何も、〜は皆〜(総括)
何も何も、小さきものは皆うつくし」=「無論什麼小東西都很可愛」。

中文翻譯

(古文原文)うつくしきもの、瓜にかきたる児の顔。雀の子の、ねず鳴きするに踊り来る。二つ三つばかりなる児の、急ぎて這ひ来る道に、いと小さき塵のありけるを、目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人ごとに見せたる。いとうつくし。頭は尼そぎなる児の、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきてものなど見たるも、うつくし。大きにはあらぬ殿上童の、装束きたてられて歩くもうつくし。をかしげなる児のあからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。雛の調度。蓮の浮き葉のいと小さきを、池より取り上げたる。葵のいと小さき。何も何も、小さきものは皆うつくし。

現代語訳げんだいごやく

かわいらしいもの。瓜にうりに描いてえがいてある幼児のようじのかお雀のすずめの子がこが、(人がひとがチュッチュッと)ねずみの鳴き声をなきごえをまねると、ぴょんぴょんと踊るようにおどるようにやって来るやってくるの。三歳くらいのさんさいくらいの幼児がようじが急いでいそいで這ってはってくる途中にとちゅうに、ごく小さなちいさなごみがあったのを、目ざとくめざとく見つけてみつけて、たいそう愛らしいあいらしい指でゆびでつまんで、どの大人にもおとなにも見せているみせているのは、実にかわいいじつにかわいい頭はあたまは尼そぎにあまそぎにしてある幼児がようじが目にめに髪がかみが覆いかぶさっておおいかぶさっているのを、払いのけないではらいのけないで首をくびをかしげて物などをものなどを見ているのもみているのも、かわいい。
大柄ではおおがらではない殿上童がてんじょうわらわが、りっぱな着物をきものをきちんと着せられてきせられて歩き回るのもあるきまわるのも、かわいい。愛らしいあいらしい幼児がようじが、ちょっと抱いていだいて遊ばせあそばせかわいがるうちに、(こちらに)かじりついて寝入ってねいってしまったのは、たいそう愛らしいあいらしい
人形遊びのにんぎょうあそびの道具どうぐ蓮のはちすの浮き葉でうきはでたいそう小さいのをちいさいのを池からいけから取り上げたのとりあげたの葵のあおい葉ではで)ごく小さいのちいさいの何もかもなにもかも小さなものはちいさなものは、みなかわいい。
たいそう色白くいろしろく肥えているこえている幼児でようじで二歳くらいなのがにさいくらいなのが二藍のふたあいの薄物などうすものなど着物のきものの丈がたけが短くてみじかくて袖をそでを襷でたすきでくくり上げているのがあげているのが這い這いしてはいはいして出てきたのもでてきたのも、また、丈のたけの短いみじかい着物できもので袖ばかりがそでばかりが目立つめだつ着物をきものを着てきて歩き回るのもあるきまわるのも、みなかわいい。八歳はっさい九歳きゅうさい十歳くらいなどのじゅっさいくらいなどの男の子がおとこのこが声はこえは子どもっぽいこどもっぽい感じでかんじで漢文のかんぶんの書物をしょもつを読んでいるのはよんでいるのは、たいそうかわいい。
鶏のにわとりの雛がひなが足があしが長くながく見えてみえて白くしろく愛らしくあいらしく着物のきものの丈がたけが短いみじかいといった様子でようすで、ぴよぴよとやかましく鳴いてないて親鳥がおやどりが、また、(雛をひなを)いっしょに連れてつれて走るのもはしるのも、みなかわいい。カルガモのかるがものたまごガラス製のがらすせいのつぼ

文法・表現

(人がチュッチュッと)(補足説明)
現代語譯中加入補注説明讓讀者理解古文省略的部分。
〜呀〜地(疊字副詞)
跳呀跳」=表連續的動作
〜時〜(時間順序)
急ぎて這ひ来る道に」→「急忙爬過來時」。
〜真是太〜(強調感嘆)
いとうつくし」→「真是太可愛」。
総而言之(総括)
何も何も」→「總而言之」。

中文翻譯

(現代語譯)可愛的東西:畫在瓜上的幼兒臉龐。麻雀小寶寶——當人發出「啾啾」的鼠叫聲時,牠就跳呀跳地過來。二、三歲左右的幼兒,急忙地爬過來時,發現路上有極小的灰塵,用很可愛的小手指捏起來,給每位大人看。真是太可愛。 齊耳短髮(尼姑式)的幼兒——頭髮垂下蓋住眼也不去撥開,歪著頭看著什麼的樣子,也很可愛。 不太大的「殿上童」——被打扮起來走著的樣子,也很可愛。 抱起一個可愛的幼兒短暫地逗弄、疼惜,他卻緊緊抱著入睡,真是令人憐愛。 玩具的小用具。從池中撈起來的、極小的蓮花浮葉。極小的葵葉。總而言之,無論什麼,小東西都是可愛的。

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文法・表現

〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
無断転載及び商用利用固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。

中文翻譯

嚴禁未經授權轉載及商用本頁文件、圖像。