「美しい」ということ【一】
学習のねらい
今回は「『美しい』ということ」という「随筆」を読みます。第七回、第八回で学習した「さくらさくらさくら」も「随筆」でした。「美しい」という言葉は誰もが知っていますが、「美しい」という「感情」がどのようなもので、どのように生まれるものかを考えることはあまりありません。普段当たり前に思っている「美しい」という感情について、少し立ち止まって考えてみましょう。
文法・表現
- 〜という「〜」を読みます
- 「『美しい』ということという『随筆』を読みます」——「X という Y」=「叫做 X 的 Y」,定義名稱的標準格式。
- 〜は誰もが知っていますが(逆接)
- 「『美しい』という言葉は誰もが知っていますが、〜あまりありません」——「誰もが+肯定」=「人人都」、「あまり+否定」=「不太」。對比的逆接。
- 考えることはありません(習慣的否定)
- 「考えることはありません」=「(我們)並不會去思考」。習慣性否定。
- 〜してみましょう(試みの勧誘)
- 「立ち止まって考えてみましょう」=「不妨停下來想想看吧」。「~てみる」=試試看;「~ましょう」=勸誘。
中文翻譯
本次我們要閱讀題為《「美しい」ということ》的「隨筆」。第7、8回學習過的《さくらさくらさくら》也是「隨筆」。「美しい」這個詞語誰都認識,但對於「美しい」這份「感情」是怎樣的東西、是如何湧生的,我們並不太會去思考。試著對於平日視為理所當然的「美しい」這份感情,停下腳步來思考看看吧。
●学習のポイント●
〈一〉「美しい」と感じる場面や物事に思いを巡らす
〈二〉文章の構成を把握する
〈三〉筆者の仕事に対する態度を整理する
文法・表現
- 〜に思いを巡らす(漢語+固有表現)
- 「物事に思いを巡らす」=「對〜進行聯想/思索」。「思いを巡らす」是書面語的固定搭配。
- 〜を把握する(漢語他動詞)
- 「構成を把握する」=「掌握結構」。漢語動詞,學術的。
- 〜に対する〜(連体修飾)
- 「仕事に対する態度」=「對工作的態度」。「~に対する」是對象を示す名詞修飾。
中文翻譯
〈一〉對自己覺得「美しい」的場面或事物展開聯想
〈二〉把握文章的結構
〈三〉整理作者對於工作的態度
■「美しい」と感じる場面や物事に思いを巡らす
みなさん、生活している中で、「美しい」と思うものは何ですか?あるいはどのような場面で「美しい」と感じるでしょうか?人によって、さまざまに異なるものを「美しい」と感じていると思います。それぞれの人ごとに感じる対象も感じ方も違う「美しい」という感情は、いったいどういう心の動きなのでしょうか?
今回の作品は、そんな問いかけに対して、一つの考え方を表した随筆です。筆者は、「輪島塗」の塗師をされている赤木明登さんです。「美しい」器を作り出している筆者が、「美しい」という感情をどのようにとらえているかを読み取っていきましょう。自分の感性と筆者の感性とを比較するつもりで読んでみるとよいでしょう。
文法・表現
- 〜でしょうか(柔らかい疑問)
- 「感じるでしょうか」=「會感受到吧」。柔和疑問,邀請讀者參與思考。
- 〜によって、〜と思います
- 「人によって異なるものを『美しい』と感じていると思います」=「我想每個人感受到的『美』各不相同」。「~によって」=依據/因;「~と思います」=主観的推測。
- 〜とらえているかを読み取る(疑問内包の名詞節)
- 「どのようにとらえているかを読み取って」——「か」帶疑問的內包子句,成為「読み取る」的目的語。學術文常見。
- 〜つもりで〜とよいでしょう(提案)
- 「比較するつもりで読んでみるとよいでしょう」=「抱著比較的心態閱讀比較好」。建議的定型。
中文翻譯
各位,在生活之中,你覺得「美しい」的事物是什麼呢?或者,在什麼樣的場面會感受到「美しい」呢?我想,根據人不同,會把不同的東西感受為「美しい」吧。對象、感受方式都因人而異的這份「美しい」這份感情,究竟是怎樣的心的動態呢?
本次的作品,是針對這樣的提問,展示出一種思考方式的隨筆。作者是擔任「輪島塗」塗師的赤木明登先生。一邊閱讀,一邊試著讀取出作為製作「美しい」器物之人的作者是如何把握「美しい」這份感情的吧。建議閱讀時抱著將自身感性與作者感性進行比較的心態。
■文章構成を把握する
まず文章全体の流れを確認します。
本作品は「随筆」です。「随筆」というのは筆者の体験に基づく思いや考えを表現した文章です。随筆を読むときには、体験などを説明している〈具体的なまとまり〉と、筆者自身の気持ちや感覚を表現している〈抽象的なまとまり〉とを意識すると、流れをつかみやすくなるど思います。
文法・表現
- 〜というのは〜です(定義の定型)
- 「随筆というのは〜文章です」=「所謂隨筆,是…的文章」。定義の定型。
- 〜に基づく
- 「体験に基づく思いや考え」=「基於體驗的思考」。「~に基づく」=基於的書面語。
- 〜と〜とを意識すると、〜やすくなる
- 「〈具体的なまとまり〉と〈抽象的なまとまり〉とを意識すると、流れをつかみやすくなる」——「と〜と」並列、「~やすい」表示「容易~」。
中文翻譯
首先確認文章整體的脈絡。
本作品是「隨筆」。所謂「隨筆」,是表現作者基於自身體驗的所思所感的文章。閱讀隨筆時,若意識到〈說明體驗等的具體區塊〉與〈表現作者本身感受到、感覺到之事的抽象區塊〉,就會變得容易掌握脈絡。
そのように意識して全体の流れを捉えると次の(1)~(4)に整理できます。
文法・表現
- そのように(副詞・指示)
- 「そのように意識して」=「那樣地意識著」。承接前文的方法・態度。
- 〜と捉えると、〜できます
- 「捉えると、〜整理できます」——「と」表示必然的結果條件(一旦…就…)。
中文翻譯
如此意識著、捕捉整體脈絡的話,便可如以下(1)~(4)來整理。
(1)第一段落部分 …… 話題の提示
「美しい」ということほど……いったい「美しい」ってなんだろう。
この箇所の最後に「いったい『美しい』って何だろう」と疑問文がありますが、この文章全体のテーマを提示しているまとまりです。
文法・表現
- 〜と疑問文があります(引用+存在)
- 「「いったい〜だろう」と疑問文があります」=「有著『…呢』這樣的疑問句」。「と」是引用助詞。
- 〜まとまりです(指示・分類)
- 「全体のテーマを提示しているまとまりです」=「是提示主題的一個區塊」。「まとまり」=「文章結構上的段落區塊」。
中文翻譯
在本段落最後有「『美しい』究竟是什麼呢」這個疑問句,這是提示整體主題的區塊。
(2)第二段落部分 …… 具体的な体験談
僕は器を自分の手で……慌てて書き留める。それだけ。
この箇所の冒頭部に「僕は器を自分の手で作ることを仕事にしている」とあります。この範囲には、筆者が「美しい」器をどうやって作っているかが、具体的な表現で書かれています。
文法・表現
- 〜とあります(書面引用の存在動詞)
- 「『〜仕事にしている』とあります」=「(文中)寫著『…』」。書面引用的客觀記述。
- 〜には、〜が書かれています(受身・存在)
- 「この範囲には、〜書かれています」=「在這個範圍內,被寫到…」。受身的記述,學術說明常用。
- どうやって〜ているか(方法の内包疑問)
- 「どうやって作っているか」=「是怎麼製作的」。方法的内包疑問,作後續動詞的目的語。
中文翻譯
在本段落開頭寫著「我以親手製作器物為業」。在此範圍內,以具體的表達寫下了作者是如何製作「美しい」器物的。
(3)第三段落部分 …… 体験談の分析
そういうことが起きるのは……そこに物語が生まれる。
前のまとまりの器の作られ方を踏まえ、その過程を筆者が分析するまとまりです。筆者の心に「形」が生み出される過程がはっきり述べられています。
文法・表現
- 〜を踏まえ(前提を承ける)
- 「作られ方を踏まえ」=「以製作方式為前提」。「~を踏まえる」=以…為基礎,書面・學術。
- 〜が分析するまとまり(連体修飾+指示)
- 「筆者が分析するまとまり」=「作者進行分析的段落」。
- 〜が生み出される(受身・自動詞化)
- 「『形』が生み出される過程」=「『形』被產生出來的過程」。受身による事象化,學術用法。
中文翻譯
本段是以前一段的器物製作方式為前提、由作者分析其過程的區塊。明確地寫出了作者心中如何產生出「形」的過程。
(4)第四・五段落部分 …… 筆者の考え
だから、これだけは……物語が始まることはない。
ここから全体のまとめが始まると考えられます。最後のまとまりは、筆者の体験談を踏まえて「美しい」がどういうものかをまとめています。
文法・表現
- 〜と考えられます(受身による客観的判断)
- 「~と考えられます」=「可以認為…/據此可知…」。受身による主体非明示的客觀記述。
- 〜を踏まえて〜まとめています
- 「体験談を踏まえて〜まとめています」=「以體驗為前提,加以總結」。
- 〜がどういうものか(疑問内包)
- 「『美しい』がどういうものか」=「『美しい』是怎樣的東西」。内包疑問,作後續「まとめる」的目的語。
中文翻譯
可以認為從這裡開始整體的總結展開。最後這個區塊,以作者的體驗談為前提,總結了「美しい」是怎樣的東西。
■筆者の仕事に対する態度を整理する
筆者は「美しい」ということを説明するために、自分の器を作る仕事の体験を用いていました。まずは、「美しい」器を、筆者がどうやって作り出しているか、第二段落部分を読み、「美しい」器がどうやって生み出されているか、順を追って整理してみましょう。
文法・表現
- 〜ために(目的)
- 「説明するために」=「為了說明」。目的を示す接続。
- 〜を用いる(漢語動詞)
- 「体験を用いて」=「使用體驗」。「用いる」比「使う」更書面、客觀。
- 順を追って〜(順序立てて)
- 「順を追って整理してみましょう」=「按部就班地整理」。
中文翻譯
作者為了說明「美しい」這件事,運用了自己製作器物的工作體驗。首先,閱讀第二段,按順序整理作者是如何創造出「美しい」器物的吧。
- 実は、美しい形が生まれるのは
- 何も考えてないとき
- 頭をひねって考えても、いい形など自分で想像することなんてできない
- ふっと降りて来るように
- 心の底からぽっかりと浮いてくるように
- 何もしていないのに……ただ待っているだけ
筆者の「美しい」器は、自身の積極的な試行錯誤によって考え出されたものではないということです。自然と、心の中にイメージが浮かんできたものだ、ということになります。筆者の生まれながらのセンスのようにも思えます。
文法・表現
- 〜によって考え出されたものではない(受身+否定)
- 「試行錯誤によって考え出されたものではない」=「並非透過試誤所想出來的」。受身的否定。
- 〜ということになります(論理的帰結)
- 「浮かんできたものだ、ということになります」=「也就是說,是浮現出來的」。整理・帰結。
- 〜のようにも思えます(推量・控えめ)
- 「センスのようにも思えます」=「看起來像是感性」。「ように思える」是主観的印象。
中文翻譯
作者的「美しい」器物,並非透過自身積極的試誤而想出來的,也就是說是自然浮上心頭的東西。也讓人覺得這看起來像是作者天生的感性。
しかし、本文の主題である、「美しい」って何だろう?という問いかけの答えとして、偶然「ぽっかりと心に浮いてくる」ものだ、というのは少し説明不足です。それに、筆者は「塗師」として「美しい」器を作り続けているのですから、きっと偶然ではない何かがあるはずではないでしょうか。
文法・表現
- 〜の答えとして〜は説明不足です(評価)
- 「答えとして〜は説明不足です」=「作為回答…說明不足」。批判的評価。
- 〜のですから(理由・既知)
- 「作り続けているのですから」=「既然持續製作」。既知の理由を述べる。
- きっと〜があるはずではないでしょうか
- 「きっと偶然ではない何かがあるはずではないでしょうか」=「一定有並非偶然的什麼不是嗎」。強い確信を柔らかく問いかける。
中文翻譯
然而,作為本文主題的「『美しい』究竟是什麼呢」這個提問的答案,「是偶然『撲通地浮現於心中』之物」這樣的說明就略嫌不足。而且,既然作者是身為「塗師」持續製作「美しい」器物的人,那麼一定存在著並非偶然的某種因素,不是嗎。
「美しい」ということ【二】
学習のねらい
前回は、「輪島塗」の塗師である筆者が、「心の底からぽっかりと浮いてくる」ものを形にして、「美しい器」を作り出していることを確認しました。でも、どのようにしたら「美しい」器が「ぽっかりと浮いてくる」のかはまだ分かっていません。今回はそれを踏まえて、「美しい」という感情の正体、心の動きを明らかにしてみましょう。次の(3)(4)の内容になります。
(1)第一段落部分―話題の提示 / (2)第二段落部分―具体的な体験談 / (3)第三段落部分―体験談の分析 / (4)第四・五段落部分―筆者の考え
文法・表現
- 〜である(書面体の断定)
- 「塗師である筆者」=「身為塗師的作者」。連体修飾の断定,書面・正式。
- 〜ものを形にして、〜を作り出している
- 「ものを形にして、器を作り出している」=「將〜化為具體的形,製作出器物」。「X を Y にする」=將 X 變成 Y。
- 〜を踏まえて(前提・基礎)
- 「それを踏まえて」=「在那基礎上」。前を承けて次に進む。
- 〜を明らかにする
- 「正体、心の動きを明らかにする」=「使…明朗」。學術文常用。
中文翻譯
上回確認了,作為「輪島塗」塗師的作者,是將「從心底深處撲通浮現」之物化為具體的形,藉此製作「美しい」器物。但是,「美しい」器物為什麼會「撲通浮現」,這一點還未弄清楚。本回以此為前提,將試圖揭開「美しい」這份感情的真貌、心的動態。將進入下面(3)(4)的內容。
●学習のポイント●
〈一〉筆者の述べる「対話」を整理し理解する
〈二〉筆者が考える「美しさ」を読み取る
〈三〉「回路」について整理し理解する
文法・表現
- 〜を整理し理解する(並列の連用形)
- 「整理し理解する」——連用形中止,並列兩個動作。
- 〜を読み取る
- 「読み取る」=「讀取出、解讀出」。解釈の含意。
- 筆者の述べる〜(連体修飾節)
- 「筆者の述べる『対話』」=「作者所述的『對話』」。
中文翻譯
〈一〉整理並理解作者所述的「對話」
〈二〉讀取作者所思考的「美しさ(美)」
〈三〉整理並理解「回路」
■筆者の述べる「対話」を整理し理解する
(3)第三段落を読んでみると、筆者が「気がついたこと」について書かれています。それは「美しい形」が「ぽっかりと浮いてくる」前には「必ずリアルに出会った対象と対話している」ということです。「リアル」とは「現実」という意味です。「対話している」こととは出会ったものと関わりを持つということです。
文法・表現
- 〜について書かれています(受身・主体非明示)
- 「『気がついたこと』について書かれています」=「(書中)寫到關於…」。受身による主体非明示,學術記述常用。
- 〜とは〜ということです(用語定義)
- 「『対話している』こととは〜ということです」=「『對話』就是…的意思」。用語の定義の定型。
- 〜とあります(引用=書面の出処)
- 「『振動を与えるような対話』とあります」=「(書中)寫著…」。引用の客観的記述。
- 〜に置き換えて考えてみてください
- 「人間関係に置き換えて考えてみてください」=「試著代入到人際關係來思考看看」。思考實驗的勸誘。
- あまり〜ません/〜こともあります(程度・可能の対比)
- 「あまり考えられません」「考えられます」——同一動詞「考えられる」(可能形)+「あまり〜ません」與「〜もあります」對比。
- つまり〜と言えそうです(柔らかい総括)
- 「つまり〜と言えそうです」=「也就是說,可以說是…」。暫定的総括。
中文翻譯
閱讀(3)第三段,便寫到了作者「所察覺的事」。那就是:「美しい」的形在「撲通浮現」之前,「必定與現實中相遇的對象進行了對話」。「リアル(real)」意指「現實」。「進行對話」也就是與所遇之物產生關聯。
那麼,「對話」是怎樣的行為呢?讓我們具體地整理一下。第三段末尾寫著「在我心底深處、像靈魂般的部分給予振動般的對話」。能想像那是怎樣的「對話」嗎?舉例來說,請試著代入到我們的人際關係來思考看看。對於僅僅擦肩而過的人,或者只是寒暄程度的對象,被震動心靈這種情形不太被考慮到。但若是能彼此暢談想法、有深入交流的對象,給予強烈影響的情形也是有的。
也就是說,作者所說的「對話」可說是並非單純表面的淺薄關係,而是自身主動接觸、試圖理解所遇對象的深層關聯。
「対話」とはどのような行為か、具体的に整理しておきましょう。第三段落の最後の方に、「僕の心の底の方に、魂のような部分に振動を与えるような対話」とあります。どのような「対話」かイメージできますか?たとえば、私たちの人間関係に置き換えて考えてみてください。通りすがりの人やたわいもない会話を交わすだけの人に突然心が揺さぶられることはあまり考えられません。しかし、お互いの考えを話し合うような深い関わりを持つ相手なら、強い影響を与えられることも考えられます。
つまり筆者が言う「対話」とは、ただ表面的なあっさりした関わりではなく、自分から働きかけ出会った対象のことを理解しようとする深い関わりだと言えそうです。
■筆者が考える「美しさ」を読み取る
次に、「対話」を経て、「美しい」という感情がどのような流れで生み出されるのか整理しましょう。
まず第三段落の最後のあたりに「対話によって、そこに物語が生まれる」とあります。「物語」とは、「リアル」な何かとの「魂に振動を与えるような」「対話」を通して生み出される、自分と対象との「物語」です。たとえば、自分と、自分に影響を与えてくれた誰かとの物語。人生の選択を決意させてくれた本と自分との物語。
さらに続けて読み進めると「一つの物語が生まれる場所に、一つ『美しい』がある」と書かれています。
文法・表現
- 〜を経て(経過・媒介)
- 「対話を経て」=「經過對話」。経由・媒介を示す。
- どのような流れで〜のか(疑問内包)
- 「どのような流れで生み出されるのか」——疑問詞「どのような」+「のか」的內含疑問。
- 〜を通して生み出される(手段による受身)
- 「『対話』を通して生み出される」=「透過對話被產生」。受身の手段表現。
中文翻譯
接下來整理一下經過「對話」,「美しい」這份感情是以怎樣的流程被產出的。
首先,第三段末尾寫到「藉由那個對話,在那裡誕生出物語」。「物語」就是——透過與「真實的某物」之間「在靈魂上產生振動般的『對話』」而誕生的——自己與對象之間的「故事」。例如,自己與某位影響過自己之人之間的物語;與決定了人生方向的某本書之間的物語。
接著繼續讀下去,「在一個物語誕生的場所,就有一個『美しい』」。
リアルにある何かと出会う。
↓
出会った何かと、心に振動を与えるような「対話」をする。
↓
その対象と自分との間に「物語」が生まれる。
↓
「物語」が生み出されるその時その場所で、心の中に沸き起こる感情が「美しい」の正体である。
文法・表現
- リアルにある何か(外来語+連体修飾)
- 「リアルにある何か」=「真實存在的某物」。外來語「リアル(real)」+「にある」=「真實地存在」。
- 〜与えるような〜(連体修飾+比況)
- 「振動を与えるような『対話』」=「能給予振動般的對話」。「ような」是比喩・形容的連体形。
- 〜が生み出されるその時その場所で(時間・場所の特定)
- 「生み出されるその時その場所で」=「就在被產出的那個時刻、那個地點」。具体的時空の特定。
- 沸き起こる感情(複合動詞)
- 「沸き起こる感情」=「湧現的感情」。「沸き+起こる」表自發的勢頭。
中文翻譯
與真實存在的某物相遇。↓
與所遇之物進行「能在心中產生振動般」的「對話」。↓
在那個對象與自己之間誕生「物語」。↓
在「物語」被產出的那個時刻、那個地點所湧起的感情,就是「美しい」的真實面貌。
■「回路」について整理し理解する
最後に筆者が生きていくうえで大事なものとして取り上げていた「回路」について整理しましょう。
文法・表現
- 〜うえで(前提・基準)
- 「生きていくうえで」=「在生活中/在活下去這件事上」。抽象的基準を表す。
- 〜もあれば、〜もある(並列の存在)
- 「対話もあれば、対話もある」=「有…也有…」。並列の存在。
- 共通しているのは、〜ことです(主題提示)
- 「共通しているのは〜ことです」=「共通的是…」。主題明示の定型。
- 〜が必要だということです(要件・帰結)
- 「『回路』が必要だということです」=「就是說需要『回路』」。結論を述べる。
- 〜のだと分かってきました(理解の到達)
- 「豊かな経験なのだと分かってきました」=「逐漸明白是豐富的經驗」。過程的な理解。
中文翻譯
最後讓我們來整理作者所提及的、在活下去這件事上作為重要之物的「回路」。
根據人不同,「美しい」的感受方式各有不同。如先前所說,有一邊感受「喜悅」一邊進行的對話,也有處在「悲傷」中的對話。但是,無論怎樣的「美しい」,共通的是:藉由對象與自己對話,心會振動。「對話」需要與「リアル(現實)」的某物相遇。也就是說,人與自身以外的某物相遇——即「與世界相連的回路」是必要的,這就是要說的事。
「美しい」看似是一種不經意的感情,但我逐漸明白,能感受到「美しい」是一種豐富的經驗。請每個人各自,去發現各式各樣的「美しい」吧。
人によって「美しい」という感じ方は異なります。「喜び」を感じながらの対話もあれば、「悲しい」中での対話もあるということでした。しかし、どんな「美しい」でも、共通しているのは、対象と自分が対話することで心が振動することです。「対話」は「リアル」な何かとの出会いが必要です。つまり、人が自分以外の何かと出会うこと、つまり「世界とつながる回路」が必要だということです。
「美しい」という何気ない感情のようですが、「美しい」と感じられるのは豊かな経験なのだと分かってきました。人それぞれ、さまざまな「美しい」を見つけてください。
「美しい」ということほど、誰にでも経験できることはない。僕が初めて「美しい」と感じたのは、いつのことだったのか、そしてどういうふうにそう感じたのか、もちろん思い出すことはできない。でもおそらく「きれい」や「かわいい」や「気持ちいい」や「おいしい」や「うれしい」や「楽しい」や「あたたかい」や「やさしい」に近いけれど、違う、もうちょっと抽象的な感覚として、僕の中にプログラムされていたんだろう。でも同時に「怖い」や「悲しい」や「寂しい」や「痛い」、更には「気持ち悪い」や「汚い」や「醜い」の中にさえ「美しい」ことがあるのを子供の僕は知っていた。そうなるともう、「美しい」ってどういうことなのかさっぱり分からなくなる。子供の頃ならば、考えずに済んだものを、大人になってからあれこれと思い悩むようになってしまったのは、いやはや、面倒なものだと我ながら思う始末。考えても考えても、いろんな「美しい」を経験し、感動させられてしまうので困ってしまう。いったい「美しい」って何だろうと。
文法・表現
- 〜ほど〜はない(比較最上級)
- 「『美しい』ということほど、誰にでも経験できることはない」=「沒有什麼比『美』更為人人共有的經驗了」。比較構文,最高級表現。
- 〜だろう(推量)
- 「プログラムされていたんだろう」=「應該是被預先程式化了吧」。推量・主観的断定。
- 〜さえ(極端例示)
- 「『醜い』の中にさえ『美しい』ことがある」=「連『醜陋』之中都有『美』」。提示極端の例として強調。
- いやはや(感動詞)
- 「いやはや、面倒なものだ」=「唉呀、真是麻煩」。呆れ・困惑を表す感動詞。
- 我ながら〜思う始末(自嘲的結末)
- 「我ながら思う始末」=「連我自己也覺得(落到這個地步)」。「~始末」帶消極的・愚かな結果のニュアンス。
中文翻譯
沒有什麼比「美しい」這件事更是人人都能經驗到的事了。我第一次感受到「美しい」是什麼時候、又是以怎樣的方式感受到的,當然已經想不起來。但大概,作為一種跟「漂亮」「可愛」「舒服」「好吃」「高興」「快樂」「溫暖」「溫柔」相近、卻又不同、稍微更為抽象的感覺,已經被預先程式化在我的內裡了吧。但同時,「可怕」「悲傷」「寂寞」「疼痛」,甚至「噁心」「骯髒」「醜陋」之中也有「美しい」之事——這一點,當小孩的我已經知道。一旦如此,「美しい」究竟是什麼,便完全弄不清楚了。如果是孩童時期、本來不思考也能過得去的事,長大成人之後卻變成這個那個地思慮煩惱——哎呀,真是麻煩之物啊,連我自己也這麼覺得,落到這個地步。再怎麼想再怎麼想,仍會經歷各種「美しい」、被感動所擒,真是讓人困擾。「美しい」究竟是什麼呢。
僕は器を自分の手で作ることを仕事にしている。ときどき、どうしたらこんなにたくさんの器の形を作り出すことができるのかと、尋ねられる。実は、美しい形が生まれるのは、美しさのことも、形のことも何も考えていないときだ。いくら頭をひねって考えても、いい形など自分で創造することなんてできない。知らず知らずに鼻唄でも歌いながら夢中で仕事しているときとか、長距離のドライブをしているときとか、海に潜っているときとか、ふっと降りて来るように、いや心の底からぽっかりと浮いてくるように、形は生まれてくる。その瞬間には、もう目の前にはっきりと器があって、手に取れるぐらいにちゃんと色も形もできあがっていて、感動している自分がいる。本当に何もしていないのに、いつもそうなる。いったい誰が作っているんだろう、これは。僕は、ただ待っているだけなのだ。言葉だって同じだ。いつも文章を書こうなんて思ってはいない。ただ待っていると、ふと文字が、ちゃんと列になって次から次へと降りてくる。いつのまにか誰かが書いてくれている感覚。僕はそれを忘れちゃいけないと、慌てて書き留める。それだけ。
文法・表現
- 〜を仕事にしている
- 「器を作ることを仕事にしている」=「以製作器物為職業」。「X を Y にする」=「將 X 作為 Y」。
- 〜なんてできない(不可能・卑下)
- 「自分で創造することなんてできない」=「自己根本創造不出來」。「なんて」帶有輕蔑・否定強化的口語感。
- 〜ように、〜ように(並列の比喩)
- 「ふっと降りて来るように、〜ぽっかりと浮いてくるように」=「彷彿從上而降、又彷彿從深處浮起」。並列的に比喩を重ねる修辞。
- いつのまにか〜くれている(受益・無意識)
- 「いつのまにか誰かが書いてくれている感覚」=「不知不覺有人為我寫下」。「くれる」表達從別人那邊受益。
- 〜じゃいけないと(注意・警戒)
- 「忘れちゃいけないと」=「不能忘記」。「~ては」的口語形「ちゃ」+「いけない」=禁止/警戒。
中文翻譯
我以親手製作器物為業。有時被人問:「怎能創造出這麼多器物的形狀呢?」其實,「美しい」的形誕生的,是我既不思考「美」之事、也不思考「形」之事的時候。再怎麼絞盡腦汁去想,自己根本創造不出好的形。不知不覺哼著小曲、沉迷於工作的時候,或是長途開車的時候,或是潛入海中的時候——彷彿從上面忽然降下,不,更像是從心底深處撲通地浮上來似的,「形」就誕生出來。在那瞬間,眼前已經清清楚楚地有個器物存在,連顏色與形都完整到能伸手拿起的程度,而為之感動的自己也在那裡。明明真的什麼都沒做,卻每次都這樣。到底是誰在製作的呢,這個東西。我只不過是在「等待」而已。文字也是同樣。我從來不會想著「要寫文章」。只要等著,文字便忽然成列、一個接一個地降下來。那是一種彷彿不知不覺中有誰替我寫下的感覺。我覺得「不能忘記」,便急忙把它記錄下來。僅此而已。
そういうことが起きるのはどうしてなんだろうと、僕なりに分析してみた。すると、降りてくる前に、前というのはついさっきのときもあるし、一年前のときもあるし、もう忘れてしまうくらい前のときもあるけれど、必ず僕が何かとリアルに出会っていることに、出会った対象と対話していることに気がついた。それは、例えば木や土など、手にした素材だったり、誰かが作った芸術作品だったり、全く意味のない石ころだったり、もちろん人だったりもする。要は何でもいいんだけれど、僕の心の底の方に、たぶん魂のような部分に、振動を与えるような何かだ。その対話によって、そこに物語が生まれる。
文法・表現
- どうしてなんだろう(自問・推量)
- 「どうしてなんだろう」=「為什麼呢」。「のだ/んだ」加上「ろう」的推量+説明。
- 僕なりに(自分なりの方法で)
- 「僕なりに分析してみた」=「以我自己的方式分析」。「~なりに」表示「以自己力所能及的方式」。
- 〜たり、〜だったりもする(並列例示)
- 「素材だったり、芸術作品だったり、人だったりもする」=「也可能是素材,也可能是藝術品,也可能是人」。「~たり~たり」是不完全列舉。
- 〜ような〜(修飾節)
- 「魂のような部分」「振動を与えるような何か」——連續使用「ような」的比喩・推量的形容。
- 〜によって、そこに〜が生まれる
- 「対話によって、そこに物語が生まれる」=「藉由對話,在那裡產生了故事」。學術的記述。
中文翻譯
「為什麼會發生這樣的事呢?」我試著以自己的方式分析了一下。結果察覺到——在它「降下」之前——這「之前」有時是剛才、有時是一年前、有時甚至是已遺忘的久遠之前——我必定與某個什麼真實地相遇,並與相遇的對象進行了對話。那可能是例如手中的素材,比如木頭或泥土;可能是某人所製作的藝術作品;可能是毫無意義的小石子;當然也可能是人。總之什麼都行,重點是「能對我心底深處——大概是像靈魂般的部分——給予振動般的某物」。藉由那個對話,在那裡便誕生出物語。
だから、これだけは言うことができる。一つの物語が生まれる場所に、一つ「美しい」があるんじゃないかと。何かと何かが出会って、振動が生まれ、さざ波となり、新しい物語が始まる。その生成の現場に「美しい」はいつも立ち会っている。喜びであれ、悲しみであれ、もっとささやかなものであれ、人の心を震わせる物語とともに「美しい」は生まれ、現れて、形になったものはまた何かと出会い、別の物語を生みだしていく。
文法・表現
- 〜だけは〜できる(限定的可能)
- 「これだけは言うことができる」=「至少這一點可以斷言」。限定的可能。
- 〜であれ、〜であれ(並列の譲歩)
- 「喜びであれ、悲しみであれ」=「無論是喜悅還是悲傷」。無論…還是…的並列譲歩構文。學術・論說的格式。
- 〜とともに(同時並行)
- 「物語とともに『美しい』は生まれる」=「與物語一同,美誕生」。同時並行的格助詞句。
- 〜には〜が必要だ
- 「人が生きていくには、世界とつながる回路が必要だ」=「人要活下去,需要與世界相連的回路」。目的+必須條件。
- 〜ないままでは、〜ない(条件・否定の連鎖)
- 「世界に触れることがないままでは、物語が始まることはない」=「不接觸世界的話,物語就不會開始」。否定的条件と帰結。
中文翻譯
因此,至少這一點我能說:在一個物語誕生的場所,會有一個「美しい」吧。某物與某物相遇,振動產生,化為漣漪,新的物語便開始。在那生成的現場,「美しい」總是一同在場。無論是喜悅,無論是悲傷,無論是更為微小的事物——只要伴隨著震動人心的物語,「美しい」便誕生、顯現;而成形之物,又會與某物相遇,產出另一個物語。
人要活下去,需要與世界相連的「回路」。並且也需要從那裡紡織出的物語。閉上眼、塞住耳、屏住呼吸、全身緊繃、不接觸世界——若一直這樣下去,物語就永遠不會開始。
人が生きていくには、世界とつながる回路が必要だ。そしてそこから紡ぎだされる物語が必要だ。目を閉じて、耳を塞いで、息を潜め、全身を堅くして、世界に触れることがないままでは、物語が始まることはない。
●赤木 明登 一九六二年[昭和37]~。岡山県生まれ。編集者を経て輪島塗・塗師に。
本文は『美しいこと』(二〇〇九年刊)による。
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文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語・並列)
- 「無断転載及び商用利用を固く禁じます」——「~及び」是書面的並列接続詞(≒および)。「固く」=嚴正地。
- 固く禁じます(漢語動詞+強調副詞)
- 「固く禁じます」=「嚴格禁止」。正式・告知の文体。