p.255 堀辰雄・伊藤整 — 新心理主義/小林多喜二 — プロレタリア文学
堀辰雄
一九〇四(明治37)〜一九五三(昭和28)
新心理主義・知性と叙情の融合の作家。東京都生まれ。胸を病み、軽井沢・追分で執筆。
文学への傾倒
東京帝大国文科を卒業。室生犀星・芥川龍之介に師事し、フランス文学(プルースト・コクトー・ラディゲ)に親しむ。芥川の自殺を契機に「聖家族」など心理小説を発表、新心理主義の代表作家となる。
聖家族
中編小説 一九三〇年発表
芥川龍之介の自殺を契機に書かれた、追悼の意を込めた作品。死と再生・愛と離別を、知性的な視線で描いた新心理主義の代表作。
風立ちぬ
中編小説 一九三六〜三八年発表
婚約者・矢野綾子が結核で死ぬまでの軽井沢のサナトリウムでの愛と死を描いた、堀辰雄の代表作。「風立ちぬ、いざ生きめやも」(バレリー)を題辞に、死を予期した若い二人の透明な愛情を、新心理主義の手法で描いた。
小説の方法
堀辰雄は「小説の方法」を意識的に追求した近代主義者。フランス文学から学んだ「内的独白」「自由間接話法」を日本語の小説に取り入れ、自伝的素材を昇華した、知性的で抒情的な作品世界を作り上げた。
伊藤整
一九〇五(明治38)〜一九六九(昭和44)
新心理主義・批評家としても活躍。北海道松前郡生まれ。心的描法・自意識の描写を理論化、文芸批評を体系化した。
若い詩人の肖像
長編小説 一九五六年発表
自伝的青春小説。商業学校時代から東京での文学修業までの少年期・青年期の精神形成を、新心理主義的手法で描いた。
小林多喜二
一九〇三(明治36)〜一九三三(昭和8)
プロレタリア文学の代表作家。秋田県大館生まれ。北海道小樽育ち。特高警察に虐殺された二九歳の早世作家。
蟹工船
中編小説 一九二九年発表
オホーツク海でカニを漁・加工する蟹工船「博光丸」を舞台に、過酷な労働条件で働く漁夫・労働者たちが、暴力的な監督に虐げられながら、最後にストライキで立ち上がる集団的反抗を描いた、プロレタリア文学の頂点に立つ作品。「集団としての労働者」を主人公にした、社会主義リアリズムの代表作。