p.215 昭和前期 続 新興芸術派・新心理主義・転向文学・戦中期作家
新興芸術派
1930年頃、新感覚派の流れを継いで、新興芸術派が登場した。プロレタリア文学に対抗して、芸術の自律と新しい技法(モダニズム文学・象徴主義・シュールレアリスム等)を主張。井伏鱒二・梶井基次郎・嘉村礒多・中山義秀・浅原六朗・舟橋聖一らがその中心。井伏鱒二『山椒魚』『屋根の上のサワン』、梶井基次郎『檸檬』『冬の蠅』『城のある町にて』、佐藤春夫『田園の憂鬱』など。
新心理主義
ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』、マルセル・プルースト『失われた時を求めて』など、西洋現代文学の意識の流れの手法を取り入れた日本の文学運動。伊藤整・堀辰雄・横光利一らが、内面意識の流れと象徴的記述で人間心理を探究した。伊藤整『生物祭』『感情細胞の断面』、堀辰雄『風立ちぬ』『菜穂子』『美しい村』など。
転向文学
1933–34年、特高警察の弾圧によりプロレタリア作家・社会主義者の多くが「転向」(社会主義から離脱)を表明した。この体験を書く文学を「転向文学」と呼ぶ。中野重治『村の家』、島木健作『生活の探求』『再建』、林房雄『青年』、亀井勝一郎、佐多稲子『くれない』等。挫折と内省、再出発の苦悩を描いた重要な文学群となる。
戦中期の作家たち
戦時下でも独自の活動を続けた作家。太宰治『晩年』(1936)『富嶽百景』『走れメロス』、中島敦『山月記』『李陵』『弟子』、坂口安吾『風博士』、井伏鱒二、横光利一『旅愁』『機械』、岡本かの子『母子叙情』『鶴は病みき』、北條民雄『いのちの初夜』など。戦争に協力する作品もあれば、伝統や個人を守る作品もあった。
昭和前期年表(中段)
上部の年表は昭和11年〜18年(1936–1943)を扱う。太宰治『晩年』『富嶽百景』、中島敦『山月記』、川端康成『雪国』、谷崎潤一郎『細雪』、横光利一『紋章』、北條民雄『いのちの初夜』、堀辰雄『風立ちぬ』『菜穂子』、林芙美子『放浪記』、火野葦平『麦と兵隊』、宮本百合子、田宮虎彦らの作品が並ぶ。