p.197 大正の時代背景
大正デモクラシー
大正期(1912–1926)は政党政治・普通選挙運動・労働運動が高まり、「大正デモクラシー」と呼ばれる民主的気運の時代。吉野作造の民本主義、原敬の本格政党内閣(1918年)、普通選挙法(1925年)などが代表。一方、治安維持法(1925年)も同時に成立し、社会主義運動の弾圧も始まる。
第一次世界大戦と日本
1914–18年の第一次世界大戦は日本にも影響を与えた。ヨーロッパ列強がヨーロッパに集中するなか、日本はアジア進出を加速し、経済も大戦景気で潤った。しかし、戦後の不況、ロシア革命の影響、米騒動(1918年)、関東大震災(1923年)など、急激な変化と社会不安が続いた。
婦人運動・恋愛結婚観
平塚らいてう(明治13年生)らの青鞜社(1911年)から始まる婦人解放運動は、大正期に大きな広がりを見せた。「元始女性は太陽であった」の宣言。恋愛・自由結婚の観念も広まり、女性の地位向上が文学・社会の重要なテーマとなる。与謝野晶子・伊藤野枝らも先鋒。
関東大震災(1923年)
大正12年9月1日の関東大震災は、東京・横浜を中心に未曽有の被害を与えた。文学的にも、芥川龍之介・志賀直哉・横光利一らに大きな精神的衝撃を与え、社会の動揺と新時代の文学の出発点となった。震災後の混乱の中で、亀戸事件・甘粕事件のような朝鮮人虐殺・社会主義者弾圧も起こった。
大正期の文学
大正期の文学は、白樺派(武者小路実篤・志賀直哉・有島武郎)の理想主義、新思潮派(芥川龍之介・菊池寛・久米正雄)の知性主義、耽美派(永井荷風・谷崎潤一郎)の感覚美など、多彩な流派が並立した。プロレタリア文学(葉山嘉樹『海に生くる人々』、徳永直『太陽のない街』)もこの時期の重要な動きとなる。