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浜島書店 — pilot v2 OCR + ruby 版(PDF 5–138 ページ)

p.120 『土佐日記とさ にっき

日本最初にほんさいしょ仮名かな日記文学にっきぶんがく

土佐日記とはとさ にっきとは

承平じょうへい5ねん(935)成立せいりつ作者さくしゃ紀貫之きの つらゆき土佐国とさのくに国司こくし任期にんきえて、きょうかえ船旅ふなたび55日間にちかん記録きろく。「おとこもすなる日記にっきといふものを、おんなもしてみむとて、するなり」とはじまる、女性じょせい仮託かたくしてかれた最初さいしょ本格的ほんかくてき仮名かな日記文学にっきぶんがく

作者・成立さくしゃ・せいりつ

作者さくしゃ紀貫之きの つらゆき(870ごろ-945、古今集こきんしゅう撰者せんじゃ中心人物ちゅうしん じんぶつ)。承平じょうへい4ねん(934)12がつ21にち土佐とさから出発しゅっぱつよく承平じょうへい5ねん(935)2がつ16にちきょう到着とうちゃく。その航海記こうかいき仮名かないた。「おとこもすなる日記にっきといふものを」と冒頭ぼうとう女性じょせい仮託かたくすることを宣言せんげんする。

内容ないよう

土佐とさ国府こくふてからきょう自邸じていくまでの55日間にちかんたび日記にっき船旅ふなたび風景ふうけいきょうした心情しんじょうむすめへのふかかなしみが主題しゅだい和歌わか50余しゅふくむ。海賊かいぞく襲撃しゅうげきおそれる場面ばめん土地とち土地とちでの宴会えんかい贈答歌ぞうとうかきょうへのあこがれの増幅ぞうふく自邸じてい荒廃こうはい発見はっけんなどがまれる。

評価ひょうか

日記にっき」とづけるが、平安時代へいあんじだい貴族きぞく日記にっき漢文書かんぶんがきの公的こうてき記録きろく)とことなり、私的してき文学的ぶんがくてき内容ないよう仮名かなくことで内面ないめん感情かんじょうこまやかな描写びょうしゃ可能かのうにし、のち日記文学にっき ぶんがく蜻蛉日記かげろう にっき和泉式部日記いずみしきぶ にっき紫式部日記むらさきしきぶ にっき更級日記さらしな にっきなど)のみちひらいた。文学的ぶんがくてき価値かち形式的けいしきてきあたらしさで近代文学きんだいぶんがくへの影響えいきょうおおきい。

亡き娘への思いなき むすめへの おもい

貫之つらゆき土佐とさ任期中にんきちゅうくしたむすめへのふかかなしみが、土佐日記とさ にっき中核的ちゅうかくてきテーマ。「りしひと」「のこと」がかえかたられ、きょうかえってからもそのいたみはえない。「かなしさにへがたきこと」「おもひのみしたふ」など、文学的ぶんがくてきたかめられた感情かんじょう表現ひょうげんられる。

冒頭の名文ぼうとうの めいぶん

おとこもすなる日記にっきといふものを、おんなもしてみむとて、するなり。それのとし十二月じゅうにがつ二十日はつかあまり一いぬときに、門出かどです。

「男(紀貫之)も書くという日記というものを、私(女のふりをして)もしてみようと思って書くのである。承平4年12月21日の戌の刻(午後8時頃)に門出する。」