万葉集巻14に収められる東国(関東以東)の庶民の歌。中央の貴族とは異なる素朴で力強い感情と、東国方言(あずま訛り)が特色。約230首。庶民の生活感情、恋愛、労働歌など、当時の地方文化の貴重な資料。
万葉集巻20に収められる防人(律令制下、九州北部の防衛のため徴用された東国の兵士)の歌。家族との別離、故郷への思いを切々と詠う。約80首。庶民の悲しみを記録した貴重な歌。大伴家持が地方派遣中に集めた。
韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてぞ来ぬや母なしにして
— 丈部稲麻呂
天地の神を祈りて狭夜杭の上にしを我は来にしを
— (防人の歌、作者不詳)
万葉集に詠まれた地名は北は陸奥から南は九州まで、当時の日本のほぼ全域にわたる。特に大和(奈良)、難波(大阪)、近江(滋賀)、伊勢、近江、上代の都だった場所、官庁所在地、地方への赴任地などが多く詠まれた。