巻頭特集 ⑤ — ミロのヴィーナス(清岡卓行)
PDF p.10(巻頭6)— 全体ビュー
① 何について述べているか。
評論文は、日常の現象や風景にむけ、「疑問を投げかける」「背景を解明する」文章。何について書こうとしている文章であるか、論点(筆者の問題意識)が何かをはじめにつかむ。
② どのように述べられているか。── 具体的な事例・抽象的な意見
評論文の意見は、「日本人の思想は……である」のように形のない抽象的なものや一般的な考えと異なる斬新なものが多い。筆者は自分の意見への信頼性を高め、読者がイメージをもって読み進められるように、具体的な事実をあげて論を展開する。
- 具体例 ↓ 意見: 具体的な事実を裏付けに意見を導く。
- 意見 ↓ 具体例: わかりやすく伝えるため例をあげる。
- * 事実が複数の場合:具体例の広がり。異なった物事にたとえる「比喩」、自説を裏付けるために他者の意見をとりあげる「引用」も具体例の一種といえる。
- * 筆者の着眼点や事実の共通点を整理しながら読むと、文章中の重要度は高くない。
要約する場合: 具体例は、意見を直接的に表すわけではないので、要約を行う場合は省略することが多い。
論点 1 1〜3段落
1段落・冒頭
ミロのヴィーナス……魅惑的であるためには、両腕を失っていなければならなかった……。
欠落したからこそ「魅惑的」という逆説的に思える意見。
2段落 ── 腕を失ったことへの評価
[具体] 両腕を、故郷であるギリシャの…秘密の場所にうまく忘れてきた……よりよく国境を渡って……時代を超えていくために。
[抽象]
- 「特殊から普遍への巧まざる跳躍」
- 「部分的な具象の放棄による、ある全体性への偶然の肉薄」
3段落 ── 腕を失って「魅惑的」になった理由
[具体] 大理石でできた二本の美しい腕が失われた代わりに、存在すべき無数の美しい腕への暗示という、不思議に心象的な表現が思いがけなくもたらされたのである。
[抽象] 「微妙な全体性への羽ばたき」
3段落まとめ
具体的な二本の腕が復活することを、ひそかに恐れるにちがいない。
*腕を失ったことを表す言葉を整理する。
対になる言葉
対照的な性質を表現することで、特定の条件下で成り立つことを強調していることに着目。
- 特殊 ⇔ 普遍: 「特殊から普遍への巧まざる跳躍」(場所・時代を問わず成り立つ)
- 部分 ⇔ 全体: 「部分的な具象の放棄による、ある全体性への偶然の肉薄」(ヴィーナス像の腕 → 像全体でとらえること)
- 有 ⇔ 無: 腕のある状態=「限定されてあるところのなんらかの有」 ⇔ 腕を失った状態=「おびただしい夢をはらんでいる無」
※ 有/無の対比は本文の配置上、判読に若干の揺れあり。
具体と抽象
- 具体…個別の形や特徴をもつこと。
- 抽象…多くのものの共通の形、性質を抜き出し、一語で表すこと。
具体的固有名詞: 腕を失った/ミロのヴィーナス/魅惑的・均整の魔/神秘的/美術作品
固有の特徴を捨てる → 抽象的な表現
表現が違うが、同じものを指す言葉を整理すると読み取りやすい。
※人名読みについて: 清岡卓行(1922–2006)は詩人・小説家・評論家。「ミロのヴィーナス」は有名な評論教材。
- ルーヴル美術館(フランス)の写真(ガラスのピラミッド)
- メロス(ミロ)島 の風景写真(崖と海、白い建物)